取材・文/坂口鈴香

杉浦朋美さん(仮名・44)は母親を看取った後、父親の認知症が判明。高血圧で糖尿病があるのに薬は飲まないし、栄養バランスを考えてつくった食事にも手をつけない。酒を飲みすぎてトイレを汚す父親との言い争いが絶えなくなった。デイサービスを利用するようになっていくぶん楽にはなったが杉浦さんの気持ちは追いつめられ、実家近くのアパートを借りて通い介護をすることにした。父親が誤嚥性肺炎で入院したのをきっかけに、ケアマネジャーに相談して、退院後サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)に入居してもらうことにした。

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伴侶が見つかった

父親がサ高住に入居すると、杉浦さんはアパートから実家に戻った。

そして1年後、杉浦さんの人生に大きな変化があった。

結婚したのだ。杉浦さんは41歳になっていた。

「結婚相談所に登録していたのですが、夫と出会ったのは登録して3年くらい経っていました。父のこともあって遠くには行かないと決めていたので、相手の条件は絞られます。それでなかなか条件にぴったりの相手が見つからなかったんですが、同じ市内に住んでいる方がいて、お会いしてみるととんとん拍子に話が進みました」

会う約束をした日は、今も覚えている。10月某日。それは母親の手術日だった。「縁を感じた」と杉浦さんはかえりみる。

初めて会って、2か月後には結婚。賃貸マンションに住んでいた夫が、杉浦さんの実家に移ることになった。

「家賃もかかりませんし(笑)。父のことは話しましたが、施設に入居していることもあり、結婚するのに特に問題にはなりませんでした。彼を父に紹介してもすぐ忘れるので、名前、年齢、仕事を何度も繰り返すことになりました」

父親のこと、自分のこと……常につきまとっていた不安は、結婚によって一気に楽になった。

【父親が行方不明に。次ページに続きます】

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