「何かあったら医療を尽くしてほしい」

叔父が有料老人ホームに入って1年ほど経ったころ、日高さんにホームから連絡が来た。

「叔父が急変し、危ない状態だというんです。『医師も呼んでいますが、このまま看取りますか』と聞かれました。私は、急だったこともあり、病院に搬送してほしいと頼みました」

この状態で病院に搬送すると、延命治療になることも予想された。医療を拒否した父親のときとは違って、日高さんが病院への搬送を頼んだのには理由があった。

「叔父から、『何かあったら医療を尽くしてほしい』と言われていたんです。つまり延命治療を施してほしい、ということでした。叔父が自分の意志をはっきり示していたので、迷わなくてすみました。それはありがたいことだったと思います」

日高さんの指示で、叔父はすぐに大きな医療センターに移され、ICUに入った。

「急に意識がなくなった原因を調べていたようですが、もうそんな段階ではありませんでした。叔父は、ICUに入ってまもなく亡くなりました。あっけなかったですね。でも、こういうのをピンピンコロリというのでしょう。母が亡くなるときは、それまで何度も持ち直していたので、また回復するだろうという希望を持っていた。だから、結果的に延命治療をするようなことになってしまいました。一方、延命治療を望んだ叔父は、ピンピンコロリという皮肉な結果になった。今、延命治療の是非が問われていますが、「良い」「悪い」の二択で考えられるような単純なものではないと思いますね」

【5】に続きます

取材・文/坂口鈴香
終の棲家や高齢の親と家族の関係などに関する記事を中心に執筆する“終活ライター”。訪問した施設は100か所以上。20年ほど前に親を呼び寄せ、母を見送った経験から、人生の終末期や家族の思いなどについて探求している。

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