月面着陸した4代目がベース。内部のムーブメントはスイスの公的機関が定める「マスタークロノメーター」認定を受けている。

「これはひとりの人間にとっては小さな一歩だが、人類にとっては偉大な飛躍だ」

1969年7月21日、地球から月まで約38万kmを旅して、人類として初めて月面に立った、アポロ11号の宇宙飛行士、ニール・アームストロングの言葉だ。その彼がアポロ計画で身に着けていた腕時計が、スイスの老舗ブランド『オメガ』を代表する「スピードマスター」。現在でもモデル名に「ムーンウォッチ」と付けられているのはそれが理由だ。6度にわたる同計画の月面着陸プロジェクトのすべてに携帯された、まさに伝説の腕時計である。

「スピードマスター」がアメリカ航空宇宙局(NASA)の公式装備品として採用されたのは、1965年のこと。しかし、このモデルは宇宙に行くために特別に製作されたのではなく、市販品として販売されていたモデルだった。その名の通り、もともとはモーターレース関係者やスポーツカー愛好家のためのドライビングウォッチとして開発されたもので、最初のモデルの発表が1957年。その4年後、宇宙船内に設置された時計のバックアップとして腕時計を探していたNASAの担当官がテキサスのある時計店に立ち寄る。ここで担当官は『オメガ』を含めていくつかの腕時計を購入、それが月に行くきっかけとなる。

計画のために集められた腕時計にNASAは過酷なテストを実施する。急激な温度変化や時計にかかる重力や衝撃などをテストするが、それに唯一、合格したのは「スピードマスター」だけだった。

アポロ13号の危機を救う

NASAの採用の条件のひとつに、宇宙船の計器が壊れて動かなくなったときに時間の計算が瞬時にできることがあったと言われている。それが奇しくも証明されたのが、1970年に打ち上げられたアポロ13号の事故だ。月への途中、酸素タンクが爆発し、13号は深刻な事態に。コンピュータも作動していない中、大気圏再突入のために制御を行なわなければならない。この事態に宇宙飛行士たちは「スピードマスター」を使って正確に14秒を計り、出力を手作業で調整し、地球へ帰還する。この緊迫した様子は、映画『アポロ13』(’95年)でも克明に描かれている。

月着陸船操縦士で2番目に月に立ったバズ・オルドリン。宇宙服の上から巻くための長い時計バンドを船内では二重にしていたことが写真からわかる。

「ほかの時計を使えと命じられたら、『オメガ』の時計を保険代わりに持っていく」と多くの宇宙飛行士に言わせたほど、信頼が寄せられる。しかも月面着陸から50年以上経っているにもかかわらず、中のムーブメント(内部機構)などは進化しつつも、現在も当時と見た目の印象が変わっていない。

未開の宇宙を目指してたゆまぬ努力を積み上げてきた実績と冒険心やロマンが共有できる歴史的なモデル。ロングセラーを続けるマスターピース=傑作と呼ぶに相応しい腕時計だ。

裏蓋に「月に降り立った最初の腕時計」という英文やNASAに採用された年を刻印。中央にギリシア神話に登場する海の守護神「シーホース」が描かれる。
腕時計73万7000円/オメガ モデル名は「スピードマスター ムーンウォッチ マスター クロノメーター」。ケース直径は42mm。ケースとブレスレットの素材はステンレススティール。風防は強化プラスチックガラス製。5気圧防水。 問い合わせ:オメガお客様センター 電話:03・5952・4400

文/小暮昌弘(こぐれ・まさひろ) 昭和32年生まれ。法政大学卒業。婦人画報社(現・ハースト婦人画報社)で『メンズクラブ』の編集長を務めた後、フリー編集者として活動中。

撮影/稲田美嗣 スタイリング/中村知香良

※この記事は『サライ』本誌2022年1月号より転載しました。年齢・肩書き等は掲載当時のものです。

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