「少しでも不幸な猫たちの役に立ちたい」という願い
6月18日、また新たに父さん母さんは子猫5匹を保護。保護活動を通じて知り合った人の知らせで、野良猫たちに餌やりをしている家の庭で産み落とされた子猫たちだ。このエリアでは既に母さんの活躍で知る限りの雌猫の不妊手術は終わっているのだが、餌やりをする人のもとには、どこからともなく猫たちが流れてくる。餌を与えるだけで不妊や去勢の手術をせず放置した結果、またしても野良の子猫が生まれた。
もしもしとはいはいの時同様、わさびちゃんちと協力者2家族が手分けしてお世話することになった。母猫は、諸々の状況から判断し、TNR(trap-neuter-return、捕獲し、避妊/去勢手術を受けさせ、元の場所に戻すこと)し、今後も地域で見守っていく予定だという。
こうして今回、またも救われた猫たちの命。母さんは個人で保護活動をする傍ら、2014年には本の収益の中から100匹のメス猫の不妊手術キャンペーンも実施するなど、「すべてのにゃんこに幸せを」の合言葉のもと、精力的に活動を続けている。
母さんに話を聞いた。
「今、私たちがこうしてささやかながら保護活動をしたり、ブログや本で保護猫たちのことを伝えたりすることができているのは、わさびの存在あってこそです。わさびという小さな子猫の存在は、あまりにも大きかった。全部わさびが残していってくれたものだと思っています。あの子が私達のもとに来てくれたのにはきっと意味があると思うし、わさびのためにも、少しでも不幸な猫たちの役に立てればと思って活動しています」
わさびちゃんちには、影ながら応援してくれる仲間たちがたくさんいる。わさびちゃんの影響を受けて保護活動を始めた人、ペットショップで購入するのではなく保護猫を飼うことにした人、温かい言葉をかけてくれる人、保護猫たちのことを気にかけてくれる人、支援の手を差し伸べてくれる人……みんなみんな、気持ちはひとつ。わさびちゃんからの「家族を捨てないで」のお願いを胸に、頑張っている。
わさびちゃんは、ずっとみんなの心の中で生きている。
■わさびちゃんファミリー(わさびちゃんち)
カラスに襲われて瀕死の子猫「わさびちゃん」を救助した北海道在住の若い夫妻。ふたりの献身的な介護と深い愛情で次第に元気になっていったわさびちゃんの姿は、ネット界で話題に。その後、突然その短い生涯を終えた子猫わさびちゃんの感動の実話をつづった『ありがとう!わさびちゃん』(小学館刊)と、わさびちゃん亡き後、夫妻が保護した子猫の「一味ちゃん」の物語『わさびちゃんちの一味ちゃん』(小学館刊)は、日本中の愛猫家の心を震わせ、これまでにも多くの不幸な猫の保護活動に大きく貢献している。
文/平松温子