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【私のクルマ遍歴】心の穴を埋めてくれた赤いオープンカー『ユーノス・ロードスター』との出会い(後編)

取材・文/糸井賢一(いといけんいち)

ただの乗り物なのに、不思議と人の心を魅了する自動車とオートバイ。ここでは自動車やオートバイを溺愛することで歩んだ、彩りある軌跡をご紹介します。

好きな自動車とオートバイを所有し、理解ある奥様と結婚され、理想的な6輪生活を送る高橋敏郎(55歳)さん。しかし愛車を理不尽な形で失い、心に大きな穴が空いてしまいます。

【前編】はこちらに

自動車とオートバイの6輪生活は、敏郎さんが何歳になろうと続けるそう。

自動車とオートバイの6輪生活は、敏郎さんが何歳になろうと続けるそう。

高性能こそ最良という価値観を覆した、赤いオープンカー

盗難により9代目『スカイラインGT-R』、通称“R33”を失った敏郎さん。自動車保険により新たな自動車を購入できるだけのお金が補償されました。しかし愛車を失ったことによる心の傷は深く、次の自動車の購入を考えることができませんでした。

数か月間、自動車のない生活を送るのですが、励ましてくれる家族に心配をかけさせないため、気を取り直して次の自動車を探し始めます。

そんな最中、たまたま寄った喫茶店の隣に位置する、中古車専門のディーラーの展示場にあった赤いオープンカーに目がとまります。マツダの『ユーノス・ロードスター』、通称“NA”です。

「R32(8代目『スカイラインGT-R』)が出た辺りから、ずっと高性能車にばかり意識がいってたんですが、そのロードスターを見たときに『そうか、ロードスターって手もあったな』って、存在を思い出しました。

ロードスターには申し訳ないけど、それまでどこか見下していた部分はあったんですよ。馬力も120馬力で、(それまで乗っていた)GT-Rの半分にも満たないですから。あくまで『場つなぎにちょうどいいか』って感じで試乗したのですが、走り出してすぐに思い込みや偏見は吹き飛びました」

ユーノス・ロードスターはデビュー直後に世界中のユーザーを驚かせ、虜にした。

ユーノス・ロードスターはデビュー直後に世界中のユーザーを驚かせ、虜にした。

このロードスターはいわゆる過走行車で、程度もあまり良いものではありませんでした。にもかかわらず、走り出した瞬間からわき上がる楽しさに、敏郎さんは心を奪われます。試乗を終える頃には、心はすっかり購入へと傾いていました。しかし2シーターでは家族みんなで乗れない点が、購入を踏みとどまらせます。

「ロードスターの購入は、家族に反対されると思いました。でも、もう2人の娘はそれぞれ自動車を持っていたので、私と嫁だけ乗れれば間に合うんですよね。説得する気満々で嫁に相談したら、『いいんじゃないの』って、拍子抜けするほどあっさり認めてくれましたね」

晴れてロードスターを迎え入れた敏郎さん。その軽快さには満足していたのですが、周囲からの視線が気になり、幌を開けての走行はできずにいました。けれど同じロードスターに乗る知人に勧められ、思い切ってオープン走行デビュー。少し走っただけで、あまりの開放感に再び衝撃を受けます。

「思わず『これでいいの!』って大きな声をあげてましたね。オートバイは当たり前ですけど、ヘルメットをかぶって乗るじゃないですか。だから顔に風を受けながら、ゆったりと走るのって、ロードスターがはじめての経験になるんです。本当に病み付きになる気持ちよさでした。

あとオープンにして走っていると、色々なところで人に話しかけられるんです。それまで乗っていた自動車ではなかったことなので気恥ずかしくはあるんですが、やっぱり嬉しいですよね」

ロードスターの魅力にすっかりとらわれ、ずっと乗り続けたいと考えていた敏郎さん。しかし購入当初からコンディションが良くなかったこともあり、数年で不具合が多発。経済的な問題が立ちはだかります。

「幌が痛むことは想定していたんですが、サスペンションやブッシュ、プラスチックパーツのヤレ、ボディの各部で材質が違うため、色あせのしかたが違うとか……気になるところが一気に出てきちゃったんです。車検と一緒に直そうとしたところ、結構な金額の見積もり書を手渡されました。

それでも当初は直そうと考えていたんです。でも、まるで狙っていたかのように走行距離が6千キロという程度のいい(当時)新型ロードスターが出てきちゃって……。乗っていたロードスターには悪いのですが、今後の出費を考えて乗り換えました」

新型ロードスターとは3代目にあたるロードスターで、通称“NC”と呼ばれているモデルのこと。NCのやさしく、やわらかいスタイルとデザインを大いに気に入った敏郎さん。購入から8年が経過しても飽きることはなく、今のところ乗り換えは考えていないそうです。

もうひとりの相棒であるオートバイにも変化が……
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