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来日中のポール・マッカートニーに「JAZZ専念アルバム」があった!

文/編集部

いよいよ今週からポール・マッカートニーの来日公演がスタートする(10月31日@東京ドームほか)。今回のツアーは「フレッシュン・アップ ジャパン・ツアー2018」と題され、5年ぶりのニュー・アルバム『エジプト・ステーション』(ユニバーサルミュージック)をひっさげての来日となる。当然コンサートでは新作からのレパートリーが演奏されるはずだが、これまでの来日公演のセットリストを見れば、今回も多くのビートルス・ナンバーが演奏されることだろう。

今回のステージについて、ポールは世界じゅうに向けてメッセージを発表しているが、どの会場に対しても「一緒にパーティしよう!」としめくくられている。きっとエキサイティングなものになるはずだ。

さて、サライ読者には「ビートルズが青春世代」だった方も少なくないと想定されるが、ドームのコンサートには行ってみたいがちょっと体力的にはつらいかも、とお思いの方も多いだろう。ポール本人は3時間のステージを休みなく歌い、弾きまくるが、それはポールが特別過ぎるのであって、現実は現実だ(苦笑)。

世間の盛り上がりの気分を感じながら、リビングルームでポールを楽しもうというあなたにぜひオススメしたいアルバムがある。それは2012年リリースの『キス・オン・ザ・ボトム』(ユニバーサルミュージック)。ポールのジャズ・ヴォーカルが聴けるアルバムだ。青春を振り返るヒット・パレードもいいが、これを聴いて今一度ポールの本当の魅力を考えてみるのはどうだろうか。

ポールの歌、演奏、楽曲はいつの時代も素晴らしいが、「ポールが好き」というのは、楽曲以上にポールの「個性が好き」ということだろう。じっくりとポールの魅力を感じるには、このアルバムは秀逸だ。

ジャズという音楽は、多くは他人の曲を歌う。多くの人が歌う「名曲」を自分の「個性」で染め上げて、「自分の歌」として表現するのがジャズ・ヴォーカル。シンガー・ソングライターであるポールの場合、個性は歌と一体化しているものではあるが、ジャズを歌うときには楽曲や演奏から離れた、純粋なポールの個性が浮かび上がってくるのだ。

録音されたのは、ハリウッドのキャピトル・スタジオ。この歴史あるスタジオでは、かつてフランク・シナトラはじめ、名だたるジャズ・ヴォーカリストたちが名唱を録音したことで知られている。しかもなんとこの録音で使われたヴォーカル・マイクは、ナット・キング・コールが使っていた、そのものなのだ。

さらにポールはキング・コールの看板曲のひとつ「イッツ・オンリー・ア・ペーパー・ムーン」まで歌っている。これはまさにポールの「ジャズ・ヴォーカリスト宣言」。ほかにも(ポール自身は、有名ではない曲を選んだということだが)「バイ・バイ・ブラックバード」「手紙でも書こう」など、ジャズ・ファンにはよく知られたスタンダードの名曲がいくつも収録されている。

もともと、ビートルズ以前に家族や親戚と歌っていた、自身のルーツを歌うところがアルバム企画の発端というが、意外なことにポールはこういったスタンダードがビートルズにも影響を及ぼしていると語る。つまりポールの音楽の歴史全部がここにあるということ。

また、ここではアレンジもバックも腕利きのジャズマンたちに任せており、ポールにしては珍しくヴォーカルに徹している(ポールはベースはもちろん、ギター、キーボード…と弾きたがり屋さんでもある)こともその印象を強くする。まさにポールの個性が超凝縮されてたコンテンツ。ポールのファンほど興味深く楽しめることだろう。

もし『キス・オン・ザ・ボトム』のあとでビートルス・ナンバーのジャズが聴きたくなったら、CDつきジャズ・マガジン『JAZZ絶対名曲コレクション』の第2号「ビートルズ・ジャズ」がオススメ。こちらはポールとは逆の、ビートルズ名曲のジャズ・アレンジ集。ジャズマンたちの個性的な演奏が、ビートルズの楽曲の魅力を浮き彫りにしている。

ポールはビートルズ楽曲をジャズにアレンジすることはなかったが、「ジャズマン」ポールが歌っていたらどんな音楽になったかこれを聴きながら想像するのも楽しい。

文/編集部

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