文/石川真禧照(自動車生活探険家)
荒地などでの走行性能に優れた車づくりに定評のある三菱自動車。約4年ぶりとなる新型乗用車は、SUVとクーペを融合させたデザインが評判だ。小型で扱い易く、装備も充実する話題の一台である。
三菱自動車工業は1970年代からWRC(世界ラリー選手権)やダカール・ラリーなど、荒地や砂漠を舞台にしたモータースポーツ競技に参戦してきた。そうした過酷な耐久レースで培った経験を技術の向上に活かし、悪路での走破性や高速走行に優れた4輪駆動車を積極的に開発。競技で何度も優勝するなど、その活躍ぶりが同社のブランド力を高め、市販車の販売台数を大きく伸ばしてきた。
しかし、近年はその人気が低迷し、2015年、ラリーの常勝車種だったランサーエボリューションの生産中止を機に、4ドアセダン市場から撤退。以降は、軽自動車とSUV(多目的スポーツ車)のパジェロの生産を主に手がけてきた。2016年には日産自動車に買収され、三菱自動車の先行きを心配する声もあった。
起死回生の新型SUV
そんな中、同社の開発陣と当時の経営者は三菱ブランドを復活させるべく、一台の車の開発を密かに進めていた。かつて世界のラリー界を席巻したランサーエボリューションの開発者から技術や知識を得ながら、海外市場でも通用する高性能車種を完成させた。
それが小型SUVのエクリプスクロスである。同車は、三菱が日産自動車に買収された約4か月後、欧州の自動車ショーで初めて公開され、大きな反響を呼んだ。
欧州に続いて日本でも2018年3月に発売が開始された。それに先だって、北海道の特設コースで雪上や氷上の走行性能を試す機会が設けられた。上り坂や下り坂、連続するカーブもある特設コースで、エクリプス クロスは想像を遥かに凌ぐ高い走行性能を発揮した。
4駆車は競技で培った技術を応用。意のままに車を操ることができる
エクリプス クロスは、クーペの要素を取り入れたスポーティな外観デザインが斬新だ。尾灯から前ドアにかけて深く刻まれた斜めの直線ラインと、躍動感溢れる立体的なボディが美しい。
注目したいのは、車体の下端まで覆うよう設計された大きなドア。車体下部にはねた泥や水滴はドアに付着するので、ズボンやスカートの裾を汚さずに乗降できる。SUVを長年手がけてきた同社ならではの、きめ細やかな工夫である。
同車は前輪駆動と4輪駆動の2種類の駆動方式を選べる。前輪駆動車は重量が比較的軽く、軽快な走りを楽しめる。一方、優れた運動性能を発揮する4輪駆動車は、ラリー競技で活躍したランサーエボリューションの技術を応用。前後輪への駆動力の配分やブレーキの制御などを統合した三菱独自の技術が導入され、意のままに車を走らせることができる。
また、スマートフォンと連携してラジオやナビゲーションなどを操作できる機能を装備。これなら地図は常に最新で、渋滞などのドライブ情報の入手も手軽にできる。
同車の販売は好調で、発売前の予約注文は目標値の5倍の約5000台だったという。
全長× 全幅× 全高:4405×1805×1685㎜/span>
ホイールベース:2670mm
車両重量:1550kg
エンジン:直列4気筒DOHCターボ/1498cc
最高出力:150PS/5500rpm
最大トルク:24.5kg-m/2000~3500rpm
駆動方式:4輪駆動
燃料消費率:14.0km/L(JC08モード)
使用燃料:無鉛レギュラーガソリン 60L
ミッション:8速スポーツモード付きCVT
サスペンション:前:マクファーソンストラット 後:マルチリンク
ブレーキ形式:前:ベンチレーテッドディスク 後:ディスク
乗車定員:5名
車両価格:車両価格286万6000円
問い合わせ:お客様相談センター 0120・324・860
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文/石川真禧照(自動車生活探険家)
撮影/佐藤靖彦
※この記事は『サライ』本誌2018年9月号より転載しました。