選評/林田直樹(音楽ジャーナリスト)
バルトークと並んで、近現代音楽への扉を開けてくれる最重要人物のひとりが、ロシアの作曲家プロコフィエフ(1891~1953)である。その作風は、20世紀機械文明の登場のような過激さと、可愛らしい女の子のあどけない表情が同居するような、振幅の大きな表現が特徴である。
かつてシャネルの香水のCMや、テレビドラマの効果音楽にも使われたバレエ音楽「ロメオとジュリエット」を2台ピアノに編曲したものが、今回の『プロコフィエフ・フォー・トゥー』では強烈である。
現代ピアノ界の女王マルタ・アルゲリッチ(1941年アルゼンチン生まれ)とコンビを組んでいるのは、セルゲイ・ババヤン(1961年アルメニア生まれ)。ババヤンは知る人ぞ知る名手で、今回はプロコフィエフの劇作品を集めて編曲をしているが、どす黒い音色、とでも言いたくなるような存在か。めくるめくような、ギラギラとした色彩感あるピアノの音色が楽しめるアルバムだ。(>>こちらのサイトで試聴できます)
【今日の一枚】
『プロコフィエフ・フォー・トゥー』
マルタ・アルゲリッチ、セルゲイ・ババヤン(ピアノ)
2017年録音
発売/ユニバーサルミュージック
問い合わせ:045・330・7213
販売価格/2800円
文/林田直樹
音楽ジャーナリスト。1963年生まれ。慶應義塾大学卒業後、音楽之友社を経て独立。著書に『クラシック新定番100人100曲』他がある。『サライ』本誌ではCDレビュー欄「今月の3枚」の選盤および執筆を担当。インターネットラジオ曲「OTTAVA」(http://ottava.jp/)では音楽番組「OTTAVA Salone」のパーソナリティを務め、世界の最新の音楽情報から、歴史的な音源の紹介まで、クラシック音楽の奥深さを伝えている(毎週金18:00~22:00放送)
※この記事は『サライ』本誌2018年7月号のCDレビュー欄「今月の3枚」からの転載です。