取材・文/柿川鮎子 写真/木村圭司
夏鳥や冬鳥など四季折々、たくさんの鳥を楽しむことができる日本。寒い日には屋外へ野鳥観察に行かなくても、マンションのベランダにやってくる鳥を暖かい部屋で楽しむバードウオッチングがおすすめです。
特にこの時期、ベランダで果物やハチミツなどを置いておくと、餌が少ないせいか、たくさんの野鳥が訪れます。中でも可愛い仕草と鳴き声で楽しませてくれるのがメジロ。くっきり白い目の周りと、濃い緑色の羽、お腹の色のグラデーションなど、ずっと見ていて飽きない、味わい深い野鳥のひとつです。
■1:目の周りの白は刺繍に喩えられた
このメジロ、漢字では目白と書くことが多いのですが、じつは「繍眼児」とも表記されます。これは目の周りの白いアイリング部分が刺繍で縫い付けたような小さな光沢のある白い羽で覆われているために名付けられました。
確かに、よく見ると目の周りだけ花びらのような白い羽根が一枚一枚、ていねいに刺繍されたような形をしています。目が白いからメジロだと思っていたら、それだけではありませんでした。刺繍されたような羽とは、先人たちの観察眼には驚かされます。
■2:性格は意外と強い
メジロは全長約12センチほどと、日本で観察できる野鳥の中でもかなり小さな部類に入ります。ミソサザイ、キクイタダキに次いで小さい体なのに、意外と性格は強く、ヒヨドリと餌を争って飛び交う姿は勇猛果敢。倍以上の大きさのヒヨドリにも負けずに、隙を狙って餌を食べようとします。
■3:留鳥と漂鳥の両方がいる
日本ではメジロは「留鳥(りゅうちょう)」のメジロと「漂鳥(ひょうちょう)」のメジロとがいます。
年間を通して同じ場所に生息する留鳥のメジロは、一年中つがいで生活しているものが多く、縄張りをもって一定の地域内で暮らします。一方、季節移動する漂鳥のメジロは、冬には小さな群れをつくります。
■4:個体を識別するポイント
ベランダでメジロの観察をする時、同じ個体が来ているかどうか、お腹の模様や体の特徴であだ名をつけておくと、身近に感じることができますよ。
雄は顔の前面と、下尾筒と呼ばれる尾の部分の黄色みが強く、お腹の中央に黄色の線が入ります。胸から脇腹は淡褐色で、お腹は白いのですが、この白がくっきり見えて、淡褐色部分が濃い色をしているのが雄。お腹の中央の黄色い線が太いと強い個体であるとか、白のアイリングが太いと雌にモテると言われていますが、はっきりしたことはよくわかっていません。
■5:鳴き声が風流
メジロは繁殖期に雄が雌の気を引くために美しい声で鳴きます。この鳴き声が風流であるため、江戸時代は鳴き合わせが盛んに行われました。相撲のように番付表がつくられ、優れたメジロは横綱と呼ばれ、3分間に800回以上も鳴くとか。現在は鳥獣保護法により、国内での飼育は禁止されていますが、昨年5月、171羽ものメジロが大阪府警保安課によって保護されました。横綱となったメジロは一羽あたり約500万円以上もの高額で取引されるそうです。
■6:体を密着させるのが好き
また「めじろ押し」の語源になった通り、メジロは個体どうしが一つの枝にピタッとくっついて休みます。保温のため、もしくは外敵から身を守るためと考えられていますが、体を密着させる理由についてはよくわかっていません。
以上、小さな野鳥メジロを観察するときに、しっておきたい6つのことをご紹介しました。
この冬、窓から見えるベランダ野鳥観察であなたもメジロの目の周りの刺繍をぜひ観察してみてください。小さくけなげな鳥が一生懸命生きる姿に、きっと感動するでしょう。
文/柿川鮎子
明治大学政経学部卒、新聞社を経てフリー。東京都動物愛護推進委員、東京都動物園ボランティア、愛玩動物飼養管理士1級。著書に『動物病院119番』(文春新書)、『犬の名医さん100人』(小学館ムック)、『極楽お不妊物語』(河出書房新社)ほか。
写真/木村圭司