■そして運命の日

翌朝4時、3発の号砲とともに政府軍が銃を乱射しながら一斉に城山を駆け登る。各所の堡塁はつぎつぎに破られ、2時間ほどで本営が置かれる岩崎谷口の堡塁だけとなった。

その頃、岩崎谷の洞窟前では西郷以下40名余が整列していた。一同は西郷を囲んで早足で岩崎谷の堡塁へと下り始めた。全員が堡塁で斬り死にするためである。

堡塁に到る途中で、銃弾が西郷の脇腹と股に中り、西郷は倒れて起き上がることができなくなった。西郷は別府晋介に向かって「晋どん、もうここでよかろ」と伝えると、正座して東を遥拝した。

「ごめんなったもんし!」(お許し下さい)の掛け声とともに、別府の太刀が一閃して西郷の首は落ちた……。

西郷の死を見届けたのち、桐野利秋や村田新八といった主だった幹部は堡塁に赴いて壮絶な戦死を遂げた。城山から銃声が途絶えたのは午前7時頃である。城山の戦いで戦死した薩軍は約160名、投降した者約200名という。

川村中将と面談したふたりも運命が分かれた。山野田は戦死し、勾留された河野主一郎は助命され、のちに青森県知事となる。

南洲墓地 中央が西郷、向かって左が桐野利秋、右が篠原国幹

西郷の首は薩軍によって隠されたが、戦後すぐに発見され、政府軍幹部の実見によって西郷と確認された。西郷らの遺体ははじめ市内の浄光明寺墓地に仮埋葬され、のちに九州各地に葬られていた薩軍兵士らの遺骨も集められて改葬された。現在の南洲墓地である。

西郷は生きている、次ページに続きます。

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