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狩野芳崖と四天王|近代日本画の父と弟子たちの知られざる画業

取材・文/池田充枝

近代日本画の黎明期を代表する画家、狩野芳崖(かのう・ほうがい 1828-1888)。畢生の大作《悲母観音》は、近代日本画の原点と称えられ、記念碑的作品として美術史に燦然と輝き、重要文化財に指定されています。

その芳崖に師事した最後の弟子たち、岡倉秋水(おかくら・しゅうすい 1867-1950)、岡不崩(おか・ふほう 1869-1940)、高屋肖哲(たかや・しょうてつ 1866-1945)、本多天城(ほんだ・てんじょう 1867-1946)は、次代の画壇を担う「四天王」として嘱望されました。

しかし、芳崖が東京美術学校(現・東京藝術大学)の開校直前に没し、画壇が岡倉天心に牽引された横山大観や菱田春草ら、のちに日本美術院で活躍する気鋭に占められると、彼らは中央画壇から遠ざかり、今では忘れられた存在となってしまいました。

この秋、狩野芳崖と四天王に初めて光を当てた展覧会が開かれています。(~12月17日まで)

重要文化財 狩野芳崖《悲母観音》〔明治21年 東京藝術大学蔵〕展示期間12月2日~17日

本展は、芳崖門下「四天王」の知られざる画業を新出作品や初紹介資料を通して多角的に辿るとともに、芳崖はじめ橋本雅邦、大観、春草ら近代日本画を切り開いていった巨匠の作品も合わせて約90点を展観します。

本展の見どころを、山梨県立美術館の学芸員、平林彰さんにうかがいました。

「まず、芳崖の代表作《悲母観音》が、期間限定でご覧いただけます。楊柳観音は善財童子と組み合わされますが、赤ん坊が命を与えられ地上界に降りていくかのような図像は、芳崖の独創でしょう。近代日本画史のはじまりを告げる記念碑的作品です。

《悲母観音》の制作を間近に見た4人の弟子が「芳崖四天王」です。まず、芳崖の顕彰にもっとも積極的に取り組んだ岡倉秋水がいます。《矢面》は、明治40(1907)年の東京勧業博覧会で三等賞を受賞した代表作です。合戦のなか、苦境に立たされた武将とその家臣たちが描かれています。

岡倉秋水《矢面》〔明治40年 福井県立美術館蔵〕

次に、後半生は本草学に傾倒して、写実的な草花図を数多く残した岡不崩がいます。《菊花図》は、満開に咲き誇る菊と、自由に飛び交う蝶が描かれています。本作品では顔料を厚く塗ることで葉や花びらの質感の違いまでも再現しています。

岡不崩《菊花図》(右幅)〔制作年不詳 福井県立美術館蔵〕

三人目は、精神性の高い仏画などを残した高屋肖哲です。《高野物狂》は、大正14(1925)年夏から三ヶ月滞在した高野山、三宝院の表広間を飾る襖絵です。全26面に及ぶ大作で、高野山を舞台に「紅葉三宝院」と謡われた謡曲を絵画化したとされます。

高屋肖哲《高野物狂》〔大正14年 三宝院蔵〕

最後は、狩野派の筆墨と写実の折衷に取り組んだ本多天城です。《山水》は、橋本雅邦の作品を下敷きに制作され、近景から中景への距離感、モチーフ同士の関係性を破綻なくまとめ上げた渾身の作です。

本多天城《山水》〔明治35年 川越市立美術館蔵〕

本展では、大観、春草らの作品もあわせてご覧いただくことで、近代日本画の多様化した世界をお楽しみください。」

【展覧会情報】
『狩野芳崖と四天王―近代日本画、もうひとつの水脈―』 
■会期:前期2017年11月3日(金・祝)~26日(日)、後期11月28日(火)~12月17日(日)※会期中展示替えあり
■会場:山梨県立美術館 特別展示室
■住所:山梨県甲府市貢川1-4-27
■電話番号:055・228・3322
■Webサイト:http://www.art-museum.pref.yamanashi.jp/
■開館時間:9時から17時まで(入館は16時30分まで)
■休館日:月曜(ただし11月20日は開館)

取材・文/池田充枝

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