国宝「聾瞽指帰」〔平安時代 金剛峯寺蔵〕後期展示

取材・文/池田充枝

高野山は、日本における真言密教の祖・弘法大師空海によって、約1200年前に開創されました。

僧侶が修行し、世の平安を祈るため金剛峯寺(こんごうぶじ)を建立した空海は、奥之院において入定(にゅうじょう)し、永遠の瞑想に入っているとされます。

空海が見守る高野山は、以後の各時代を通じて人々の信仰を集め、貴族から庶民にいたるまで、幅広い人々が高野参詣や奥之院への納骨などを行いました。こうした信仰によって、石塔が建ち並ぶ奥之院の景観が形作られていったのです。

現在では、奥之院を含む境内と山中の参詣道(さんけいみち)が、「紀伊山地の霊場と参詣道」として世界遺産に登録されています。

*  *  *

そんな高野山に伝わる至宝の数々を拝観できる貴重な展覧会が、仙台市博物館で開かれています。

本展は、東日本大震災からの復興を祈念し、仙台市博物館だけで特別に開催するものです。会場では、高野山に伝わる空海ゆかりの宝物や、密教美術などにこめられた祈りの世界をご紹介します。

重要文化財 快慶作「孔雀明王坐像」〔鎌倉時代 正治2年(1200)金剛峯寺蔵〕前期展示

本展の見どころを、仙台市博物館学芸員の酒井昌一郎さんにうかがいました。

「空海が中国から持ち帰り、常に身近に置いたという国宝・諸尊仏龕(しょそんぶつがん)(枕本尊・まくらのほんぞん)や、空海が中国から投じて高野山に届いたと伝わる重要文化財・金銅三鈷杵(飛行三鈷杵・ひぎょうさんこしょ)、そして空海自筆の仏教論である国宝・聾瞽指帰(ろうこしいき)(下巻を後期展示)の3つは、高野山でも特別な機会にだけ公開される由緒ある宝物です。いずれも空海の時代から1200年を経て、現在も大切に伝えられています。

この他、縦三メートルを超える国宝・五大力菩薩像(三幅を展示替)や、かつて比叡山横川に伝わった国宝・阿弥陀聖衆来迎図(あみだしょうじゅらいごうず)(有志八幡講蔵 前期展示)といった平安仏画の傑作や、鎌倉時代の仏師・運慶作の国宝・八大童子立像(六軀のうち四軀を展示替)といった高野山の至宝の数々を展示します」

なかなか拝見できない高野山の至宝が数多く出品される貴重な展覧会です。ぜひこの機会にご覧ください。

名称 東日本大震災復興祈念特別展 空海と高野山の至宝』
会期 2017年7月1日(土)~8月27日(日)※会期中展示替えあり。前期:7月1日(土)~7月30日(日)、後期:8月1日(火)~8月27日(日)
会場 仙台市博物館
住所 仙台市青葉区川内26(仙台城三の丸跡)
電話 022・225・3074
Web http://kukai-koyasan-sendai.jp
開館時間 9時~16時45分(入館は16時45分まで)
休館日 月曜(ただし7月17日、8月7日は開館)、7月18日(火)

取材・文/池田充枝

 

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