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明治以来の精神を継ぐ「驚異の超絶技巧」工芸品の展覧会

【牙彫】 安藤緑山《 胡瓜》

取材・文/藤田麻希

政治や経済だけでなく、美術の世界にも及んだ明治維新の影響。とくに工芸の世界には激震が走りました。それまで藩のお抱えだった蒔絵師、刀装具に関わる金工師などの職人たちは、幕藩体制が崩壊し、パトロンを失ったため窮地に陥ったのです。

そこで彼らは、外国人の好みを取り入れた輸出用の製品を作り始め、新たな販路を開拓。その「超絶技巧」とも形容される最高レベルの技術は、万国博覧会などでも好評を博しました。

岡山と京都で活躍した正阿弥勝義(しょうあみ・かつよし)も、そんな時代に翻弄された職人の一人。藩お抱えで刀装具を作っていましたが、廃刀令で仕事は立ち行かなくなり、海外向けの室内装飾品の制作に方向転換しました。

代表作の「群鶏図香炉」は、さまざまな色の金属を組み合わせて鶏のパーツをつくり、銀地にはめ込んでいます。刀の鍔のような平らな面ではなく、湾曲した面に象嵌するのは高度な技術を要します。また、実際に生きものを観察することで生み出された、鶏や蟷螂の生き生きとしたポーズも見どころです。

【金工】 正阿弥勝義《 群鶏図香炉(蟷螂)》 清水三年坂美術館蔵

じつは、こうした質の高い明治時代の工芸の多くは、海外に渡ってしまったため、国内で目にする機会もなく、歴史の闇に埋もれかけていました。ですが近年、海外から積極的に買い戻すコレクターが増え、再評価の兆しが見えています。

*  *  *

そんな明治工芸の傑作の数々を紹介する展覧会驚異の超絶技巧!―明治工芸から現代アートへ―」が、東京・日本橋の三井記念美術館で開催されています(~2017年12月3日まで)。また同展には、明治工芸の精神を受け継ぐ現代作家の作品も合わせて展示されています。

本展を監修した明治学院大学教授の山下裕二さんは、企画の趣旨を次のように説明します。

「この展覧会は、2014年に開催し、好評を博した『超絶技巧! 明治工芸の粋』展の続編として企画いたしました。前回と同様、明治工芸の大半は、京都・清水三年坂美術館の村田理如さんのコレクションですが、今回はそれ以外の所蔵先からも作品をお借りしました。

なおかつ、明治工芸のスピリットを受け継ぐような、素晴らしい作品を作っている現代作家を私が選びまして、その作品も展示しています。世間的にはさほど知名度がない人がほとんどですけれども、私が本当に惚れ込んでいる作家ばかりで、そのクオリティは素晴らしいです。ぜひ彼らのことも知っていただきたいと思います」

それでは、この展覧会に展示されている作品をいくつかご紹介します。

まずは、こちら何で出来ていると思いますか?

【牙彫】 安藤緑山《 胡瓜》

実の表面のトゲトゲとしたイボ、茎のざらざらとした質感、葉の葉脈、くるくると伸びる蔓、どこをとっても胡瓜そのもの。じつは、象牙でできた彫刻です。

作ったのは、明治時代末から大正時代にかけて活躍した牙彫師(象牙を彫る彫刻家)の安藤緑山。経歴不詳の謎の作家で、大正時代に下谷に住んでいたこと以外は、生没年はおろか、墓地の場所、子どもや弟子がいたのかどうかもわかりません。独自の技術で彩色を施した、象牙製の果物や野菜がいくつも残されています。

【木彫】 前原冬樹《 一刻:皿に秋刀魚》 2014年

一方、こちらの食べかけの秋刀魚は、一つの木材から彫り出す一木造りの技法でできています。つまり、皿の上に木彫の秋刀魚を置いたのではなく、皿も木彫でできており、皿と秋刀魚はほんのわずかな部分でくっついて一体化しているのです。途中で一箇所でも折れてしまったら一巻の終わり。細心の注意が求められます。

写実の追求という意味では安藤緑山と共通していますが、この作品を制作したのは前原冬樹という現代の彫刻家です。プロボクサー、サラリーマンを経験したあとに、東京藝術大学油画科に入学した、変わった経歴の持ち主で、油画科で学んだ経験が表面の彩色に生かされています。

【漆工】 柴田是真《 古墨形印籠》

一見、ただの古びた墨のかたまりのようで、どこが超絶技巧なのかわからないこちらの作品は、漆で墨を再現したもの。ひび割れや、欠けた様子もわざと作っています。作者の柴田是真は、幕末から明治時代にかけて活躍した蒔絵師であり、絵師。言われなければ気づかず通り過ぎてしまうような、通好みの粋な作品を残しました。

【金工】 髙橋賢悟《 origin as a human》 2015年

こちらは現代作家、高橋賢悟の作品。無数の花の集合体で頭蓋骨ができあがっています。一つ一つの花のパーツは、生の花から型取りし、アルミニウムを流し込んで鋳造したもの。大小含めて4万個ものパーツをつくり組み合わせていく、気の遠くなるような作業です。

明治時代には一般的でなかったアルミニウムという素材を用い、新しい方向で超絶技巧を駆使していることがわかります。

*  *  *

いかがでしょうか。制作された時代は違いますが、言葉や説明を抜きに驚嘆できる作品ばかり。明治時代と現代の作品をシャッフルして並べる展示室もあり、新旧のコラボレーションが楽しめます。ぜひ会場で実見いただきたい展覧会です。

【展覧会情報】
『特別展 驚異の超絶技巧!―明治工芸から現代アートへ―』
■会期/2017年9月16日(土)~12月3日(日)
■会場:三井記念美術館
■住所:東京都中央区日本橋室町二丁目1番1号 三井本館
■電話番号:03・5777・8600(ハローダイヤル)
■公式サイト:http://mitsui-museum.jp
■開室時間:10時〜17時(金曜日は19時まで)
※入館受付は閉館時間の30分前まで
■休館日:月曜、10月10日(火)
※10月9日(月・祝)は開館

取材・文/藤田麻希
美術ライター。明治学院大学大学院芸術学専攻修了。『美術手帖』などへの寄稿ほか、『日本美術全集』『超絶技巧!明治工芸の粋』『村上隆のスーパーフラット・コレクション』など展覧会図録や書籍の編集・執筆も担当。

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