圧倒的なエネルギーを秘めた色彩の奔流!最大級の個展「草間彌生 わが永遠の魂」展

(C)YAYOI KUSAMA

取材・文/藤田麻希

前衛芸術家、草間彌生(くさま・やよい)。昨年の文化勲章受章のニュースを記憶しているかたも多いかもしれません。

自らの作品をプリントした服を身にまとい、カラフルなウィッグをかぶった強烈なルックスから、ただならぬ存在であることは伝わってきますが、漠然としたイメージがあるのみで、意外と彼女の足跡や作品を知らない人も多いかも知れません。

《トラヴェリング・ライフ》京都国立近代美術館蔵 1964 151.0×82.0×高さ248.0cm (C)YAYOI KUSAMA 撮影:上野則宏

草間は1929年、長野県松本市に生まれました。幼い頃から、物体のまわりにオーラが見え、植物や動物の会話が聞こえるといった幻覚に悩まされ、その強迫観念から逃れるように絵を描き始めます。そして母親の反対を押し切って京都で日本画を学んだ後、1957年に単身渡米。翌年からニューヨークを拠点に活動します。

最初に注目されたのは、網目状の模様で画面を埋め尽くしたネットペインティングの連作でした。草間が一貫して取り組んでいる水玉やネットを反復させる作品は、アクションペインティング(描く行為を重視し、絵の具を垂らし、飛び散らせる等の方法をとる絵画)からミニマリズム(単純性を追究した最小限の手段で制作する絵画や彫刻)へと舵を切りつつある、当時の現代美術の流れに合致します。

その後、性や食をテーマにした布製のソフトスカルプチャー、社会へメッセージを投げかけるパフォーマンスアートも発表しながら、15年もの間、狂乱と熱気が渦巻く60年代のニューヨークのアートシーンで活躍しました。

《黄樹》フォーエバー現代美術館蔵 1992 162.0×390.0cm (C)YAYOI KUSAMA

これだけでも十分、美術史上に名を刻む功績ですが、草間の場合、その勢いはとどまることを知らないどころか、むしろ加速しています。

1998年ニューヨーク近代美術館(MoMA)で日本人として初めて、大規模回顧展を開催。以後、再評価の機運は高まり、森美術館や東京国立近代美術館、パリのポンピドゥー・センターやロンドンのテート・モダン、アジア、中南米の巡回展など、国内外での個展が相次ぎ、新作も次々に発表。2012年にルイ・ヴィトンとコレボレーションアイテムを発売したことでも話題になりました。

《生命の輝きに満ちて》2011 Courtesy of Ota Fine Arts,Tokyo/Singapore; Victoria Miro Gallery,London; David Zwirner, New York (C)YAYOI KUSAMA

そんな草間彌生の最大級の個展が、東京・六本木の国立新美術館で開かれています(~2017年5月22日まで)。

新作《わが永遠の魂》のシリーズ約130点が部屋を埋め尽くす第一部と、松本在住時代に描いた初期作から90年代までの作品を回顧する第二部に大きく分かれ、現在の草間とこれまでの草間、二つの面から全体像を探ることができます。

「わが永遠の魂」シリーズより《私に愛を与えて》2015年(C)YAYOI KUSAMA

2009年から始めて、現在もなお描き続けている《わが永遠の魂》のシリーズは、194.0×194.0cm(初期作はサイズが異なる)の正方形のカンヴァスにアクリル絵の具を用いて、さまざまなモチーフを埋め尽くした連作。自らの背丈よりも大きな画面を、草間は2、3日に1枚という驚異的なペースで描き続けています。

国立新美術館副館長の南雄介さんは次のように説明します。

「今回出品されている《我が永遠の魂》132点はどれも日本で公開されたことがない作品ですし、このシリーズがこれだけの数並ぶことも初めてです。特徴としては、まず、色彩が豊富なことが見て取れると思います。

作品ごとにバリエーションが豊かで、非常に抽象的なものもありますし、具象的なモチーフもあります。そういう意味では草間さんのいままでの活動の集大成といってふさわしい、代表作になるシリーズかと思います」

展示室に足を踏み入れると、カラフルでポップな草間ワールドが広がる空間に心がはずみますが、ふと、これが一人の人間によって生み出されたことを思い出すと、その「生」のエネルギーに圧倒されます。

草間は「私は毎日朝から晩まで芸術の制作に命がけで戦っています」と語ります。全身全霊を捧げて生み出された作品たちに会いに、ぜひお出かけください。

【国立新美術館開館10周年 草間彌生 わが永遠の魂】
■会期/2017年2月22日(水)~5月22日(月)
■会場/国立新美術館 企画展示室1E
■住所/東京都港区六本木7-22-2
■電話番号/03・5777・8600(ハローダイヤル)
■料金/一般1600(1400)円 大学生1200(1000)円 高校生800(600)円
*( )内は20名以上の団体料金。
*中学生以下無料
*障害者手帳をお持ちの方と付添の方1名は無料
■開館時間/10:00 ~ 18:00 金曜日は20:00まで(入場は閉館の30分前まで)
※4月29日(土)~5月7日(日)は毎日20:00まで開館
■休館日/毎週火曜日  ※5月2日(火)は開館
■アクセス/
東京メトロ千代田線 乃木坂駅 青山霊園方面改札6出口(美術館直結)
都営地下鉄大江戸線 六本木駅 7出口から徒歩約4分
東京メトロ日比谷線 六本木駅 4a出口から徒歩約5分
■展覧会公式サイト/http://kusama2017.jp/

取材・文/藤田麻希
美術ライター。明治学院大学大学院芸術学専攻修了。『美術手帖』などへの寄稿ほか、『日本美術全集』『超絶技巧!明治工芸の粋』『村上隆のスーパーフラット・コレクション』など展覧会図録や書籍の編集・執筆も担当。

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