サライ.jp

取材・文/池田充枝

能書家として名高い江戸期の僧・良寛(りょうかん、1758-1831)は、越後出雲崎(現・新潟県三島郡出雲崎町)に生まれ、18歳で出家し禅僧となりました。その4年後、備中玉島(現岡山県倉敷市)円通寺の住職・国仙和尚と出会い、彼に伴って円通寺に赴き、本格的な修行生活に入りました。

10年余りの修行の後、諸国を行脚して39歳の時に越後に帰郷。山中の簡素な庵で暮らしながら、書や和歌・俳諧・漢詩など多彩な作品を生み出しました。

良寛は「詩人の詩、書家の書、料理人の料理」を「玄人の臭気がある」としてことのほか嫌ったと伝えられています。生涯寺を持たず、名利にとらわれぬ生活を送り、すべての生ける者への愛を失わず、和歌や漢詩を詠み、書に興じました。

子どもらとおはじきやかくれんぼ、毬つきをして遊ぶ良寛は、ウソ・偽りのない「純」な子どもの心を大切にしていた良寛。彼の書の魅力は、このような純真で高貴な精神が表れているところにあるのでしょう。

*  *  *

そんな良寛の人となりが伝わる書画作品を多数展示する展覧会『慈愛の人 良寛 その生涯と書』が、岡山県立美術館で開かれています。(~2017年11月5日まで)

本展覧会は、清貧の思想を貫いた江戸時代の禅僧・良寛の生涯を、自筆の書およそ120点を含む全156点の作品から辿ります。初公開作品も多く、良寛ゆかりの人々の作品も揃え、全国的に有名な良寛研究家・小島正芳氏の解説パネルを多数掲示して、多角的な視点で良寛像に迫る見応えのある展示となっています。

本展の見どころを岡山県立美術館の学芸員、清水容子さんにうかがいました。

「今回は、出品作品すべてが良寛コレクター秘蔵の品であり、初公開の作品が多数出品されます。地元岡山の円通寺にゆかりのある作品や、良寛の師・国仙和尚の数少ない遺墨も出品されます。

まず見ていただきたいのは、《自画賛 良寛像 袖裏繍毬直千金》です。

「自画賛 良寛像 袖裏繍毬直千金」〔個人蔵〕

この作品は、昭和4年に刊行された耐雪本『良寛遺墨集』に掲載されている有名な作品。優しい風貌をした良寛像は自筆の自画像賛で、袖から2、3個手まりを取り出している光景を描いている珍しいものです。良寛は、手毬が上手で誰にも負けなかったといわれます。

次は《漢詩 憶在圓通時》で、円通寺で修行していた頃を振りかえって書かれた詩です。良寛は国仙和尚のもとで参禅して指導を受ける時も、朝の坐禅の時も誰よりも先に行って修行していたと詠んでいます。円通寺を辞してから30年経った頃、往時を回顧し、涙を流しながら国仙和尚への感謝の想いを綴ったものです。

「漢詩 憶在圓通時」〔個人蔵〕

そして《貞心尼宛書簡 先日は眼病の》は、良寛が晩年の法弟・貞心尼に宛てた手紙です。その書は、優美な趣があり、魅力的です。この手紙は、良寛が亡くなる5ヶ月前のもので、体調が悪いことを伝えており、そのような状況であるにも関わらず、やさしい心遣いにあふれた美しい書簡です」

「貞心尼宛書簡 先日は眼病の」〔個人蔵〕

墨跡から滲み出す良寛様のやさしさに、心癒される展覧会です。ぜひ真筆を間近でご鑑賞ください。

【開催要項】
『慈愛の人 良寛―その生涯と書
■会期:前期2017年9月29日(金)~10月15日(日)後期10月17日(火)~11月5日(日)※会期中約20点の展示替えあり
■会場:岡山県立美術館
■住所:岡山市北区天神町8-48
■電話番号:086・225・4800
■Webサイト:http://okayama-kenbi.info
■開館時間:9時から17時まで、10月27日(金)は19時まで(入館は閉館30分前まで)
■休館日:月曜日(祝日の場合は開館し翌火曜日休館)
■料金:一般1000円 65歳以上(要証明書)800円 大学生(要学生証)500円 高校生以下無料、障がい者手帳や難病患者であることを証する書類の提示者とその介護者1名は無料
■アクセス:JR岡山駅より徒歩約15分、路面電車「東山行」で「城下」下車徒歩約3分

取材・文/池田充枝

関連記事

ランキング

人気のキーワード

新着記事

ピックアップ

サライプレミアム倶楽部

最新記事のお知らせ、イベント、読者企画、豪華プレゼントなどへの応募情報をお届けします。

公式SNS

サライ公式SNSで最新情報を配信中!

  • Facebook
  • Twitter
  • Instagram
  • LINE

サライ最新号
2020年
10月号

サライ最新号

大人の逸品Online Store

通販別冊
通販別冊

心に響き長く愛せるモノだけを厳選した通販メディア