取材・文/池田充枝
徳川家康が未墾の地、江戸に移封されて以降、徳川幕府はさまざまな治水工事を行い、町づくりに邁進しました。そして江戸の町は、市中に堀や水路が張り巡らされ、水運の発達した町となりました。
江戸の人口は約100万人。同時代のパリ、ロンドンの約2倍の人口を有する、世界屈指の大都市でした。そうした江戸に暮らす人々の生活物資を確保するために、諸国から物資を運ぶ菱垣廻船や樽廻船が江戸湾に入り、道三堀、日本橋川、京橋川、神田川、八丁堀、隅田川などの水路を利用して市中に運ばれました。
また生活用水の確保にも力がそそがれ、神田上水、玉川上水はじめ上水道の普及率は下町地域でほぼ100%、江戸全体では60%以上であったといわれます。
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まさに“水の都”といえるほど、水に縁の深かった江戸の様子を、浮世絵を通して実感できる展覧会『大江戸クルージング』展が、東京・原宿の太田記念美術館で開かれています(~2017年7月23日まで)。
本展は、浮世絵のなかから江戸市中の水辺を描いた作品をはじめ、弁才船が行き交う日本全国の湊の様子や、江戸時代に活躍したさまざまな船を描いた作品を選んで展示し、江戸時代の舟運や舟遊びの様子を解説します。
本展の見どころを、太田記念美術館の主幹学芸員、渡邉晃さんにうかがいました。
「今、2020年の東京オリンピックに向けて、東京の水辺の魅力を再認識し、観光や交通手段として舟運を見直す動きが注目されています。
実は現在の東京からは想像もつかないほど、昔の江戸は市中に堀や水路が縦横に張り巡らされ、隅田川や江戸湾にも囲まれた「水の都」でした。
当時の浮世絵には、隅田川などの川で舟遊びを楽しむ人々や、現在のタクシーのように、各地の船宿から出る乗合船を交通手段として使う人々、そして日本各地から集まってきた物資を江戸市中に運ぶ舟運の様子などが数多く描かれており、水辺と船が庶民の生活に密着した、非常に身近な存在であったことがうかがわれます。
なかでも両国の夏の納涼は江戸の一大イベントで、船遊びや花火を楽しむ人々が大挙して押寄せ、川面には大小の船が所せましと浮かびました。
本展では、いくつかの視点から江戸時代の舟運や舟遊びの様子を紹介いたします。浮世絵を見ながら江戸時代の水辺をクルージング気分でめぐる、夏にぴったりの展覧会です」
情緒あふれる江戸の涼しげな水辺風景。ぜひ会場でタイムスリップしてみませんか。
名称 | 『企画展 大江戸クルージング』 |
会期 | 2017年7月1日(土)~23日(日) |
会場 | 太田記念美術館 |
住所 | 東京都渋谷区神宮前1-10-10 |
電話 | 03・5777・8600(ハローダイヤル) |
Web | http://www.ukiyoe-ota-muse.jp |
開館時間 | 10時30分~17時30分(入館は17時まで) |
休館日 | 月曜(ただし祝日の場合は開館)、7月18日(火) |
取材・文/池田充枝