愛知県指定文化財「鬼面文鬼瓦」〔尾張国分寺跡出土 奈良時代(8世紀)妙興寺蔵〕

今では一般に広く普及している建築素材である瓦(かわら)ですが、一般家庭や店舗などに使われるようになったのは、あまり古い話ではありません。

はじめ飛鳥時代に朝鮮半島から仏教とともに伝わった瓦は、最初は寺院建築に使われました。古代から中世にかけて当時の宗教・政治権力と結びつく形で発達していき、やがて城郭建築にも使われるようになりました。当時の一般家屋が草葺屋根などを主体としたなかで、瓦葺屋根はひときわ目を引く存在でした。

江戸時代後半以降は、瓦が耐火性に優れていることから、大火に悩んだ城下町や街道沿いなど、建物が密集する地域を中心に瓦が葺かれるようになり、宗教・政治権力と離れたところにも普及していきました。さらに近代を通して各地域の自然環境や生業、生活の変化などと呼応する形で一般にも広く普及していきました。

江戸時代後半以降に瓦葺屋根が著しく普及するなかで、各地で瓦の生産がはじまり、「三州瓦」「石州瓦」「淡路瓦」など日本を代表する瓦の産地が名を馳せるようになりました。

「金箔桐文鬼瓦」〔清須城跡出土 安土桃山時代(16世紀)清須市教育委員会蔵〕

そんな瓦の歴史を紹介するユニークな展覧会「企画展 瓦万華鏡 ~社会、地域、心をつなぐ~」が、愛知県陶磁美術館で開かれています。(~2017年6月25日まで)

本展は、我が国最大の生産を誇る三州瓦を中心に、愛知の瓦の系譜や歴史的背景を出土品、館蔵品、個人蔵など約250点の作品や写真などの資料で紹介します。

本展の見どころを愛知県陶磁美術館の学芸課、大西遼さんにうかがいました。

「約250点の作品と共に、1400年の愛知の瓦の魅力を紹介する試みは、今回が県内初となります。展示室には、愛知県指定文化財の鬼瓦をはじめ、煌びやかな金箔瓦、鮮やかな釉が施された瓦など、見ごたえのある瓦が並びます。人々の暮らしに呼応しながら様々に変化してきた「時代を映し出す鏡」としての瓦の魅力や、瓦の持つ造形の美しさをお楽しみください。

また、講演会やワークショップ、街歩きや参加型の写真展など、イベントも開催します。瓦の新たな魅力を、様々な視点から発見する機会です。皆さんの御観覧、御参加をお待ちしています」

暮らしの身近なところに歴史を見出す興味深い展覧会です。ぜひ足をお運びください。

【企画展「瓦万華鏡 ~社会、地域、心をつなぐ~」】
■会期:2017年4月15日(土)~6月25日(日)
■会場:愛知県陶磁美術館(愛知県瀬戸市南山口町234)
■公式サイト:http://www.pref.aichi.jp/touji
■開館時間:9時30分から16時30分まで(入館は16時まで)
■休館日:月曜

取材・文/池田充枝

 

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