英語をマスターしたいと思うきっかけになったのは、何でしょう。私が英語を勉強しようと思ったきっかけは、自分一人だけが英語を話せない状況で言葉が出てこず、悔しい思いをしたことからでした。

ビートルズやザ・ビーチボーイズの歌を聞いて英語の歌詞の意味を知りたいと思ったり、映画スターに憧れて英語をマスターしたいと思った人もいることでしょう。

さて、今回紹介するのは「see red」です。

唐辛子

目次
「see red 」の意味は?
「see red」の語源は?
他動詞と自動詞の「see」
「see red」(激怒する)姿とは?
最後に

「see red」の意味は?

「see」は(見る)、「red」は(赤)です。「see red」は、(赤を見る)ですが、そこから転じて

正解は…
「激怒する」という意味になります。

『ランダムハウス英和大辞典』(小学館)には、「激怒する、憤る」と書かれています。

She saw red when her little brother broke her favourite toy.
(弟が彼女のお気に入りのおもちゃを壊したとき、彼女はとても怒った。)

などと使います。

「see red」の語源は?

「see red」(激怒する)という表現の語源には、いくつかの説がありますが、一説では闘牛が赤を見ると突進する姿に由来するといわれています。ほかにも、大きな怒りによって顔が赤くなる様子そのものを表しているという説もあるようです。

赤色には、血や情熱、勝利、健康、エロティシズム、愛などさまざまなイメージがありますね。英語には「see red」と似た表現に、強い怒りで冷静さを失う様子をあらわす「red mist(赤い霧)」という言い方もあります。この表現は会話よりも文学や物語などで使われることが多いようです。

A red mist descended and she went crazy, accusing him of all sorts of things.
(怒りがふつふつと湧いて彼女はおかしくなり、あらゆることで彼を責めたてた。)

他動詞と自動詞の「see」

「see」には、他動詞として「〜をみる」「〜を理解する」という意味と自動詞の「目に入る」「わかる」という意味があります。

例:
I saw a butterfly.(蝶を見た。他動詞)
I see.(わかった。自動詞)

他動詞は目的語を伴い、名詞や代名詞、to不定詞、that節などが続きます。一方、自動詞は目的語を取らず、前置詞句や補語が後に続くことが多いですが、何も続かない場合もあります。

「see red」は赤を目的語にして、主語が怒っている状態をさす他動詞の「see」です。

I saw red.(私は激怒した。)

日本語話者にとって、このニュアンスは少しむずかしいですね。

「see red」(激怒する)姿とは?

「see red」(激怒する)人を日常で見かけることは、そうそうないかもしれません。しかし、お寺で不動明王像や金剛力士像を見たことがある人は多いでしょう。憤怒の形相で私たちを見下ろす仏像の迫力に圧倒されます。中には真っ赤なお姿の不動明王や金剛力士もいらっしゃいますね。

金剛力士像は、口を開けた阿形(あぎょう)像と、口を結んだ吽形(うんぎょう)像が対となり、目を剥き、全身の筋肉を誇示しながら寺門に構えています。これは、彼らが寺院を守護するガードマンとして、仏敵の侵入を防いでいるためです。風雨にさらされながらも最前線で「仁王立ち」し、身体を張って守っています。

また、大日如来の化身といわれている不動明王は、迷える衆生を守り導くためにこの世に現れました。温厚に諭しても、愚かな人々はなかなか耳を傾けない。そのため、抵抗する者をしっかりと縛るための羂索(けんさく)を持ち、また片方の手には煩悩を断ち切る剣を持って、恐ろしい形相で、弱い人間を善い方向へと導く究極の愛の姿です。

ここには私欲から出る怒りはありません。敵から仏を守り、人々を幸福へと導くための大きな愛があります。もし実際に「see red」(激怒する)人の姿を見たら、やはり恐ろしいでしょう。ただ、それが愛のための怒りであるならば、意味はずいぶんと変わってくるように思います。

最後に

いかがでしたか? 昨今ではパワハラやモラハラなどの言葉をたびたび耳にします。確かに、人をコントロールしようと一方的に「see red」(激怒する)人がいたら、少し距離を取ったり、逃げてしまうほうが賢明な場合もあります。

けれど、もし本気で人を思い、相手のために怒ってくれるような人と出会えたら、それはかけがえのない存在なのかもしれませんね。次回もお楽しみに!

●執筆/池上カノ

日々の暮らしやアートなどをトピックとして取り上げ、 対話やコンテンツに重点をおく英語学習を提案。『英語教室』主宰。  京都祇園にある建仁寺塔頭両足院をベースに、ひとつのテーマについて英語で語りあう『うごく哲学』を対面とオンラインで定期開催。その他、他言語を通して、それぞれが自分と出会っていく楽しさや喜びを体感できるワークショップやイベントを多数企画。

●構成/京都メディアライン・https://kyotomedialine.com

 

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