英会話教室へ通い、苦労して学んだ時代は、遠い昔のこととなりつつあるようです。最近では、生成AIに英会話を学んでいる人も少なくないと聞きます。その主な理由が、恥ずかしさを感じずに、気兼ねなく学習できるからだそうです。スマートフォンの翻訳機に任せて世界を旅する人も増えているそうです。
しかし、たとえ英語が身についたとしても、人と人との関係を築けないというのは、なんとも味けない感じがします。この記事では、生成AIではなく、英会話教室を主宰する池上カノが「The proof is in the pudding.」について解説します。
目次
「The proof is in the pudding.」の意味は?
「The proof is in the pudding.」の由来
「The proof is in the pudding.」ってどんなこと?
最後に
「The proof is in the pudding.」の意味は?
「The proof is in the pudding.」を直訳すると、「proof」は(証拠)、「pudding」は(プリン)ですが……、そこから転じて
正解は……
「論より証拠」という意味になります。
『ランダムハウス英和辞典』(小学館)には、“The proof of the [or a] pudding is in the eating.”と表記がされており、「((ことわざ)) プディングの味を確かめるには食べてみることだ;ものは試しだ.」と書かれています。
「The proof is in the pudding. 」とは、物事の価値や真実は聞いたり見たりしたのでなく、体験して初めて分かるという意味の表現です。一般的な表現ですが、実際には少し年配の方の間で使われる印象があります。
より口語的な表現として、似たような意味で
You never know till you try. (やってみないと分からない。)
などもあります。
「The proof is in the pudding.」の由来
この表現は、もともと「The proof of the pudding is in the eating.」(プディングの味<出来具合>は食べてみないと分からない)という言い回しからきました。ここでの「proof」という単語は、<証拠>というよりも品質や価値を試すという<テスト>のようなニュアンスです。
ちなみに、この「プディング」は、日本で一般的な、甘くまろやかなデザートではなく、味付けされたひき肉やオートミールを詰めて茹でたり蒸したりした英国料理を指しています。プディングがちゃんと加熱され、正しく調理できているかどうかは、実際に食べてみるまで分からないことからこの表現が生まれたようです。
「The proof is in the pudding.」ってどんなこと?
京都市左京区の大原は、四季折々の美しい山々に囲まれた観光地として知られています。その大原からさらに30分ほど山道を進むと、大見という小さな集落があります。この集落は平安時代からの歴史を持つものの、1960年代後半、炭焼き産業の衰退や厳しい冬の影響で、住民が次々と去り、半ば廃村のような状態が続いていました。
しかし、近年、この集落を現代的な形で蘇らせようと「大見新村プロジェクト」が立ち上がり、建物の修復や環境整備、様々なイベントが行われるようになりました。
2018年の秋に、大見新村プロジェクトのみなさんと協働で、「大見をARUKU」という英語ワークショップを開催しました。メンバーの大見村で畑仕事をしている河本順子さん、街歩き・街づくりを研究されている北雄介さんたちと共に、インド、インドネシア、ドイツからの参加者を含めた11人が集まりました。参加者は古い畑や墓地、廃校、残された家々や神社を巡って、自分が感じたことを英単語で地図上に記します。
記録の際、地図に直接記入するのではなく、トレーシングペーパーを重ねて記しました。終了後、全員のトレーシングペーパーをスキャンして画像化し重ね合わせます。今はほとんど誰も住んでいない集落を歩き、感じた気持ちを言葉にして地図を作成する。しかも言語は英語です。まさに「やってみなくちゃ分からない」ワークショップでした。
出来上がった地図には、nostalgia(郷愁)、scary(怖い)、cozy(心地よい)などさまざまな感情が記されていました。母国語のように自由には話せないけれど、だからこそ飾らない正直な気持ちが記された熱量の高い地図が出来上がったように思います。日頃使っている言葉の枠から出ることで、自分の気持ちをあらたに問い直す機会となったようにも感じました。
最後に
母語ではない言語で話す際、文法に不安になったり、言葉を飲み込んだりすることがあるかもしれません。けれど、自由がきかないからこそ、自分の気持ちと正直に向き合えることもあると、出来上がった地図を通して感じました。
「The proof is in the pudding.」(論より証拠)。不得手だと考えあぐねる前に、慣れない言葉で表現してみたら、新たな自分と出会っていくかもしれませんね。次回もお楽しみに。
●構成/京都メディアライン・https://kyotomedialine.com