最近はずいぶんと便利な世の中になったもので、AIが絵画作品を描いたり、作曲をしてくれる時代になりました。それでもやはり、人間らしい感情や相手を思いやる心は、人と人とのコミュニケーションを通して生まれるように思います。誤解やすれ違いに戸惑うこともあれば、気持ちが通じ合う喜びを感じることもある。そんなやり取りのもどかしさや楽しさを味わいながら、英語を勉強するのもいいのではないでしょうか?

さて、今回ご紹介するのは “I’ve been there.”です。

目次
“I’ve been there.」の意味は?
「気持ちがわかる。」の他のフレーズ
“I’ve been there.” 人の気持ちが分かるとは?
最後に

“I’ve been there.” の意味は?

完了形の“have been” は、「~したことがある」と経験をあらわします。一方、副詞の“there” は、「そこに」という意味です。直訳すると「私はそこに行ったことがある。」となりますが、この意味に加えて、よく使われる会話フレーズとして……、

「その気持ち分かります。」という意味があります。

相手が大変な、辛い経験をしたという話をした時、同じ経験をしたことがあると、共感を表すような場合に使われる表現です。

たとえば、

1. That must be really tough, I’ve been there myself.
(それは本当に大変ですね。私にも経験があります。)

2.
A: I’m feeling really overwhelmed with all my deadlines this week.
(今週は締め切りが多くて、いっぱいいっぱいなんです。)
B: I’ve been there – try making a list and prioritizing what needs to be done first. 
( 私もそんな経験があるよ。リストを作って、やるべきことの優先順位をつけてみたらどうかな。)

などと使います。

「気持ちがわかる」の他のフレーズ

相手に共感を表す英語表現はたくさんあります。こちらではその一部をご紹介します。

1. I feel you.
(分かるよ。)

親しい友人などに対して使う、カジュアルな表現です。

2. I know how you feel.
(気持ちが分かります。)

共感を表す一般的なフレーズです。

3. I’ve been through something similar.
(同じようなことを経験しました。)

“have been through”は(つらい体験をする)という意味です。

など、他にもさまざまな表現があります。

“I’ve been there.” 人の気持ちが分かるとは?

私たちはときに辛い体験をし、その痛みを抱えて前に進むことが難しいと感じる瞬間があります。そんなとき、同じような経験をした人に話を聞いてもらうだけで、不思議と心が穏やかになることもあるのではないでしょうか。

アメリカの詩人であり活動家でもあったマヤ・アンジェロウ(1928~2014年)は、詩の朗読や歌を通してその想いを表現し続けました。1960年代にはキング牧師とともに公民権運動に身を捧げ、2010年にはアメリカで民間人に贈られる最高の栄誉のひとつ、大統領自由勲章を授与されています。彼女の作品には、数多くの体験を重ねてきた深い説得力と、時代を超えて心に響く力があるように感じられます。

そんな彼女の詩の一部をご紹介します。

“I’ve learned that people will forget what you said, people will forget what you did, but people will never forget how you made them feel.”

(人は、言われたことや、されたことは忘れてしまう。けれど人は、どのように心を動かされたかは決して忘れないと私は学んだ。)

–Maya Angelou(マヤ・アンジェロウ)

出典:Shane Tennyson. Maya Angelou Quote Notebook. Independently published, 2021

記憶は頼りないですが、どんな感情であれ、心が動かされた瞬間を決して忘れることはない――ここに、人間の哀しみとおかしさ、そしてぬくもりがあるように感じられました。

最後に

マヤ・アンジェロウの別の作品に、 “Still I Rise” (それでも私は立ち上がる)という詩があります。

You may shoot me with your words,
You may cut me with your eyes,
You may kill me with your hatefulness,
But still, like air, I’ll rise.

あなたは言葉で私を攻撃するかもしれない
あなたは視線で私を傷付けるかもしれない
あなたは憎しみで私をあやめるかもしれない
それでも空気のように 私は立ち上がる

(一部抜粋)

–Maya Angelou(マヤ・アンジェロウ)

引用:『And Still I Rise』(Dr Maya Angelou著、Virago Press Ltd)

さまざまな経験を経て、やさしい笑顔とユーモアで人の心に寄り沿う彼女の表現に、多くの人が勇気を与えられています。

 “I’ve been there.” 
(その気持ち分かります。)

つらい経験をしている人に、こんな風に声をかけることができたら素敵ですね。

次回もお楽しみに。

●執筆/池上カノ

日々の暮らしやアートなどをトピックとして取り上げ、 対話やコンテンツに重点をおく英語学習を提案。『英語教室』主宰。  京都祇園にある建仁寺塔頭両足院をベースに、ひとつのテーマについて英語で語りあう『うごく哲学』を対面とオンラインで定期開催。その他、他言語を通して、それぞれが自分と出会っていく楽しさや喜びを体感できるワークショップやイベントを多数企画。

●構成/京都メディアライン・https://kyotomedialine.com

 

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