私たち多くのサライ世代が英語を学習し始めたのは、中学一年生、13歳くらいからだったでしょう。それから、好きか嫌いかはともかく、社会人になるまでの長い間、英語と付き合ってきたものです。およそ10年ほど習ったものの、英語を完全にマスターすることができたのは、どれほどの人がいるでしょうか? しかし、今や幼児から学習を始め、小学生になったら英語を流暢に話すお子さんもいらっしゃるようです。

10年以上学んできたものとして、格好よく使える英語のフレーズをひとつやふたつは身につけておきたいものです。今回は、「on the tip of my tongue」をご紹介いたします。

目次
「on the tip of my tongue」の意味は?
「on the tip of my tongue」に似た表現は、他の国でも見られる
外国語を話すということ
最後に

「on the tip of my tongue」の意味は?

「on the tip of my tongue」を直訳すると、tipは「先」、tongueは「舌」なので、「舌の先に乗っかっている」ですが……、そこから転じて

正解は……
「言葉が喉元まで出かかっているけれど、思い出しそうで思い出せないもどかしい様子」を表わします。

『小学館 ランダムハウス英和大辞典』では、「(1)口に出しそうになって、口まで出かかって (2)思い出せないで」と説明されています。

「The title of the book is on the tip of my tongue. 」というセンテンスの場合、「その本のタイトル、ここまででかかってるんだけど……」という意味になります。名前や言葉が出かかっているけれど、どうしても思い出せないときに使う表現です。

「on the tip of my tongue」に似た表現は、他の国でも見られる

実はこのフレーズ、英語だけでなく、さまざまな言語で同じ表現やよく似た言い回しがあります。

スペイン語の「Lo tengo en la punta de la lengua」を直訳すると、「舌の先にある」。イタリア語の「Ce l’ho sulla punta della lingua」、フランス語の「Sur le bout de la langue」、両者の直訳は「舌の先で」という意味になります。いずれも同じように、名前や言葉を思い出せないもどかしさの表現です。

5か国語を流暢に話すマルチリンガル(多言語話者)のトルコ人の友人に、トルコ語について尋ねてみたところ、トルコ語にも同じような言い回しがあるようです。「dilimin ucunda (舌の先)」。トルコ語では、この2つの単語だけで、「もう少しで出てきそうだけど、言葉が出てこない、もどかしい」ことを表わします。

また、ドイツ語では「舌が重くなる( Es liegt mir auf der Zunge)」。ギリシャ語では舌の先ではなく下に向かう、「under」 の感覚で、「舌の下にある(Είναι κάτω από τη γλώσσα μου <einai kato apo ti glossa mou>)」などと表現します。

土地や言語は違えど、舌先がむずむずして思い出しそうで思い出せないもどかしい感覚は、世界共通のようです。日本語では 「喉まで出る/喉まで出かかる」がこの意味に近いでしょうか。

この「喉まで出かかる」には、「知っているはずなのに、もう少しのところで思い出せない」という意味の他にも、「もう少しのところで、口に出してしまいそうになる」がありますね。

外国語を話すということ

私たちは英語など、母語以外の言語で話す際、どうしても思い出せない単語があって、その単語を思い出そうとして会話が途切れてしまうようなことがあります。人に何かを伝えようと話すのに、ひとつの単語が思い出せず、焦って言葉が続かずに会話の流れが止まってしまう。こんな経験は、みなさんにも1回や2回あるのではないでしょうか?

THE JAPAN TIMES』(2023年)によると、世界ではおおよそ43パーセントの人がバイリンガルだという統計が出ています。反対に、日本のように、ほぼ単一言語を話す国の方が珍しいようです。

とはいえ、いくら言語が堪能であっても、思いを伝えられないもどかしさは世界共通。単語が思い出せなくても、相手になんとか気持ちを伝えようといろんな方法で表現をする。自分だけが思い出せないのではなく、もしかしたら相手も言葉を探しているかもしれません……。

相手に伝わっているかどうかを確かめながら、耳を傾け、互いの理解を深めようとするプロセスこそが言語習得にとって大切なことのように感じます。

最後に

いかがでしたか? 英語で「言葉の起源や由来」を「etymology」と言います。英語は、ゲルマン語やラテン語に由来する言葉であり、さまざまな国や文化からの借用語でもあります。そして、時代によって変化し続ける面白さも兼ね備えます。

そんな英語の多様性をご紹介しながら、日常で使えるおもしろい表現を取り上げていこうと思います。次回もお楽しみに。

●執筆/池上カノ

日々の暮らしやアートなどをトピックとして取り上げ、 対話やコンテンツに重点をおく英語学習を提案。『英語教室』主宰。  京都祇園にある建仁寺塔頭両足院をベースに、ひとつのテーマについて英語で語りあう『うごく哲学』を対面とオンラインで定期開催。その他、他言語を通して、それぞれが自分と出会っていく楽しさや喜びを体感できるワークショップやイベントを多数企画。

●構成/京都メディアライン・https://kyotomedialine.com

 

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