母語でない言語で話す時、「どう言えばいいんだろう?」と戸惑ったことはありませんか? 突然の質問や予想外の展開に、ことばが出てこない―― そんな経験は、みなさん一度はあると思います。けれど、ただ正しく話すことだけがゴールではありません。大切なのは、自分らしい言葉で正直な気持ちを伝えられることではないでしょうか。
さて、今回ご紹介するのは “out of the blue ” です。

目次
“out of the blue” の意味は?
他言語では「思いがけない出来事」をどう表現する?
最後に
“out of the blue” の意味は?
“out of the blue” を直訳すると、
“blue” は(青)、 “out of ” は(~から外に)ですが……、そこから転じて
正解は……
「思いがけなく、突然に」という意味になります。
このフレーズは、晴れた青い空から稲妻が落ちるという意味の “a bolt from the blue” というイディオムからきています。思いがけない出来事が起こった時に使う日常の会話表現です。日本語の「青天の霹靂(へきれき)」と似た言い回しですね。

『プログレッシブ英和中辞典』(小学館)には、「不意に;青天の霹靂で」と書かれています。
例えば、
The idea struck me out of the blue while I was taking a walk.
(散歩してたら、とつぜんアイディアが浮かんできた。)
Out of the blue, rain started pouring down just as I was gardening.
(庭仕事をしてたら急に雨が降り出しました。)
会話文
A: You’ll never believe what just happened!
(信じられないことが起こった!)
B: What? Tell me!
(なになに? どうしたの。)
A:Remember that French actor I was raving about yesterday? I saw him at a café, and he started talking to me out of the blue!
(昨日絶賛してたフランスの俳優いたでしょ? 彼がカフェにいて、なんと私にとつぜん話しかけてきたの。)
B: No way! What did he say?
(えー! なにを話したの?)
A:He asked if I knew of any cozy restaurants nearby. I was so starstruck I could hardly get a word out!
(近くにいい感じのレストランがあるか知ってますかって聞かれたの。ことばが出ないくらいドキドキしちゃった。)
などと使います。
他言語では「思いがけない出来事」をどう表現する?

世界の言葉にも、「思いがけず起こる出来事」のさまざまな表現があるようです。
フランス語には、 “Comme un cheveu sur la soupe”(スープの中の一本の髪の毛のように)というフレーズがあります。不意に起こった違和感を表すフランスならではのおもしろい表現ですね。
また、ロシア語の“ Как гром среди ясного неба” やスワヒリ語の “Kama radi katika anga ya jua”、アラビア語の“ كالبرق في سماء صافية ” は、いずれも(澄んだ空にとどろく雷のように)という言い回しで、日本語の「晴天の霹靂(へきれき)」と同じく、「思いがけなく、突然に」という意味があります。
世界のあらゆる地域で、共通する比喩表現があるのは興味深いですね。
最後に
青空にとつぜん光る稲妻のように、予期せぬ出来事は日々私たちのもとに訪れます。そんな瞬間に大切なのは、それをどう受け止め、どう向き合うかかもしれません。
外国語を話すとき、ふと単語が出てこなくて、もどかしさを感じることがあります。けれど、一つの単語にこだわらず、新しい表現を探してみてはいかがでしょう。シンプルなことばを組み合わせることで、思いがけず詩的な響きが生まれるかもしれません。日々の会話も、予期せぬ出来事への向き合い方も、創造力と好奇心があれば、新たな扉を開く鍵となるのではないでしょうか。
『ザ・ニューヨーカー』(『The New Yorker』 2003年刊)誌に紹介された“Three American Haikus”にアメリカの小説家・詩人であり、ビート・ジェネレーションを代表する作家のひとり、ジャック・ケルアック(Jack Kerouac) の俳句が紹介されています。
A raindrop from
the roof
Fell in my beer(一粒の雨が
出典:『The New Yorker』(2003年刊)誌 “Three American Haikus”
屋根から
ぼくのビールの中に落ちた)
日常の小さな “out of the blue”(思いがけないこと、とつぜんの出来事)をみつめたおかしみが伝わってきます。とつぜんの出来事が起こったとき、少しでも楽しむことができるなら、新たな扉が開くかもしれませんね。
次回もお楽しみに。
●構成/京都メディアライン・https://kyotomedialine.com
