「あれ? なんて漢字だったっけ」と悩むことが多くなっていませんか? 少しだけ思い出す努⼒をしてみるものの、結局は「まあ、いいか」と諦めることもあったりして、記憶の衰えを実感することもあるのではないでしょうか? しかし、思い出すことが記憶⼒の鍛錬につながると⾔われています。
「脳トレ漢字」第235回は、「急坂」をご紹介します。大人なら誰でも書ける簡単な漢字ですが、意外と読み方を間違えているかもしれません。実際に読み書きなどをしていただき、漢字への造詣を深めてみてください。
「急坂」とは何とよむ?
「急坂」の読み方をご存知でしょうか? 「きゅうさか」ではなく……
正解は……
「きゅうはん」です。
『小学館デジタル大辞泉』では、「傾斜の急な坂」と説明されています。「はん」という読み方は、「坂」の音読みです。「きゅうさか」「きゅうざか」と読まれることがしばしばありますが、正しくは「きゅうはん」になります。
「急坂」の漢字の由来は?
「急」という漢字は、心がせわしいこと・さしせまることを表しているとされ、これが転じて「急を要する」「厳しい」という意味になったそうです。また、「坂」は山の斜面や傾いた土地を表しています。この二文字が組み合わさって、「傾斜の急な坂」という意味になったと考えられます。
「吉原」ゆかりの坂
国土の7割近くを森林が占めており、多様な地形になっている日本には数多くの坂があります。長崎市や神戸市などは、全国有数の急坂がある都市として知られていますね。坂だけでいえば、都内だけでも700以上の坂があるそうです。
断崖絶壁に見えるほどの急坂から緩やかな坂まで、多くの人に利用されていますが、かつて江戸最大の花街として栄えた吉原にも、賑わいを見せる坂がありました。それが、衣紋坂(えもんざか)です。
衣紋坂は、新吉原の日本堤から大門にいたるまでの間にあった坂で、吉原に向かう客が登楼前に着物の襟を正して身なりを整えたことが、名前の由来だと言われています。大門へ続く道には、「編笠茶屋」が軒を連ね、顔を隠したい客に編笠を貸したり道案内をしたりしていたそうです。
また、大門付近には現在放送されているNHK大河ドラマ『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』の主人公・蔦屋重三郎(つたや・じゅうざぶろう)の店があったとされます。衣紋坂も大門も、残念ながら関東大震災で消滅してしまいましたが、現在でも付近にはかつての名残りが残されています。
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いかがでしたか? 今回の「急坂」のご紹介は、皆さまの漢字知識を広げるのに少しはお役に立てたでしょうか? 坂の名称からも、その当時の暮らしや文化を垣間見ることができますね。由来を知ることで、新たな発見ができるかもしれません。
文/とよだまほ(京都メディアライン)
HP:https://kyotomedialine.com FB
参考資料/『デジタル大辞泉』(小学館)
『日本国語大辞典』(小学館)
『日本大百科全書』(小学館)