「あれ? なんて漢字だったっけ」と悩むことが多くなっていませんか? 少しだけ思い出す努⼒をしてみるものの、結局は「まあ、いいか」と諦めることもあったりして、記憶の衰えを実感することもあるのではないでしょうか? しかし、思い出すことが記憶⼒の鍛錬につながると⾔われています。
「脳トレ漢字」第231回は、「海鼠」をご紹介します。珍味として知られており、たまにスーパーの生鮮食品コーナーに並んでいます。実際に読み書きなどをしていただき、漢字への造詣を深めてみてください。
「海鼠」とは何とよむ?
「海鼠」の読み方をご存知でしょうか? 「うみねずみ」ではなく……
正解は……
「なまこ」です。
『小学館デジタル大辞泉』では、「ナマコ綱の棘皮(きょくひ)動物の総称。すべて海産。」と説明されています。海鼠といえば、細長く柔らかい感触が特徴的ですね。前端に口と触手、後端に肛門があり、皮膚の中には小さな骨片が含まれているそうです。
食用とされるマナマコやオキナマコなどは生食だけでなく、干して海参(いりこ)にしたり、内臓を塩漬けにして海鼠腸(このわた)にしたりして食べます。どれも珍味として知られており、中華料理などで使用されることが多いです。
また、かつては海鼠のことを「こ」「かいそ」などと呼んでいたとされます。
「海鼠」の漢字の由来は?
独特な漢字が使われていますが、これは海鼠の生態に由来するそうです。海鼠は夜に活動する生物で、暗くなると海の中を鼠(ねずみ)のように這いまわるため、このような漢字になったと考えられています。
海鼠と日本神話
食欲をそそる見た目ではないものの、コリコリとした癖になる食感で、好きな人も多いのではないでしょうか? 海鼠は古くから食用とされており、栄養価が高い珍味として親しまれてきました。日本最古の歴史書『古事記』にも、海鼠と芸能の祖神・アメノウズメにまつわる逸話が記されています。
天岩戸(あまのいわと)の前で踊りを披露し、立て籠もっていた天照大神を連れ出すことに成功したアメノウズメ。天照大神の側近として仕えるようになり、彼女の孫・ニニギノミコトとともに地上に降り立ちました。
地上に降りたアメノウズメは、海にいる様々な魚を集め、「お前たちは天の御子(ニニギノミコト)にお仕えするか?」と魚に尋ねたそうです。その場にいた魚は皆、「お仕えいたします」と答えましたが、海鼠だけは何も言いませんでした。
すると、怒ったアメノウズメは「この口は何も答えられない口なのか!」と、持っていた小刀で海鼠の口を裂いたそうです。それ以来、海鼠の口は裂けたような形をしていると言われています。海鼠にとってはかわいそうな話ですが、神話にも登場するほど、当時の人々にとって馴染み深い生物だったのかもしれませんね。
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いかがでしたか? 今回の「海鼠」のご紹介は、皆さまの漢字知識を広げるのに少しはお役に立てたでしょうか? 海鼠の口を見る機会はほとんどありませんが、餌を食べている瞬間は確かに裂けているように見えるかもしれません。海鼠の口の形状について考えていた人がいたという事実は、なかなか面白いですね。
文/とよだまほ(京都メディアライン)
HP:https://kyotomedialine.com FB
参考資料/『デジタル大辞泉』(小学館)
『日本国語大辞典』(小学館)
『日本大百科全書』(小学館)