姉の発案で兄弟が集う

I:さらに興味深かったのは、藤式部の発案で、中宮彰子のもとに異母兄弟が集った場面です。キーワードは「仲間」。里帰りした藤式部がたまたま居合わせた双寿丸(演・伊藤健太郎)の「仲間といればひとりでいるより楽しいし、仲間のために強くなろうと思える」と語っていたのを受けて、彰子に提案したんですよね。

A:ですよね。中宮彰子が「この先も父上の意のままになりとうはない」と藤式部に漏らしたのを受けて、式部が「ならば仲間をお持ちになったらいかがでございましょうか」と進言したのがきっかけです。まあ、なにはともあれ、倫子(演・黒木華)、明子(演・瀧内公美)と母が違う兄弟が中宮彰子のもとに集いました。ここには明子所生の能信が抜けていましたが。

I:この場面を最後に中宮彰子は藤壺を離れ、枇杷(びわ)が植えられていたという「枇杷殿」に移ることになります。藤壺には三条天皇の女御となった姸子(演・倉沢杏菜)が入ったそうです。こうやって少しずつ歴史は移りかわっていくのですね。

A:道長の次女姸子は、劇中では宴会を好み、反物などを「これらをみな買い上げよう」と散財する様子が描かれていますが、概ね事実のようですね。夫である三条天皇は18歳も年上で、三条天皇の第一皇子敦明親王(演・阿佐辰美)は姸子と同い年。ですから劇中であったような「す・き」という場面もあったのかもしれません。

I:姸子は、道長の娘のなかではもっとも美しい姫だったともいわれています。心ならずも18歳年上の帝に入内することになり、心中穏やかではなかったのかもしれません。そう思うとなんだか姸子が気の毒に思えてきました。

A:さらに、中宮彰子のもとを訪ねた敦康親王(演・片岡千之助)が、御簾をくぐって彰子の顔を見るというタブーを犯しました。元服前ならいざ知らず、元服後にやってはいけないマナー違反です。

I:気持ちはわかりますが、かなしくなる場面でした。敦康親王は自分で自分の首を絞めている。そして、そのことを道長に報告する行成(演・渡辺大知)。そのくらい黙っておいてやればと思ったりしましたが、仕事に忠実な行成は、報告せずにはいられなかったのでしょう。道長のことを責めていましたが、「だったら、報告しなきゃよかったのでは?」と思っちゃいました。

A:史実かどうかはともかく、当時の感覚では「そのくらい」では済まないのでしょう。道長に忠実に仕えながら葛藤もみせる「人間行成」。なんだかもっともっと彼のことを知りたくなりますね。

●編集者A:月刊『サライ』元編集者(現・書籍編集)。「藤原一族の陰謀史」などが収録された『ビジュアル版 逆説の日本史2 古代編 下』などを編集。古代史大河ドラマを渇望する立場から『光る君へ』に伴走する。

●ライターI:文科系ライター。月刊『サライ』等で執筆。『サライ』2024年2月号の紫式部特集の取材・執筆も担当。お菓子の歴史にも詳しい。『光る君へ』の題字を手掛けている根本知さんの仮名文字教室に通っている。猫が好き。

構成/『サライ』歴史班 一乗谷かおり

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