最近、パソコンやスマートフォンの普及により、⾃ら字を書く機会はめっきり減少してきました。その影響からか「読める、けれども、いざ書こうとすると書けない漢字」が増えていませんか? 以前はすらすらと書けていたのに、と書く⼒が衰えたと実感することもあります。
脳トレ漢字の記事を読みながら漢字の読み書きをすることで、脳のトレーニングとなります。また、この記事を通じて、読むこと・書くこと・漢字の意味を深く知り、漢字の能⼒を⾼く保つことにお役⽴てください。
「脳トレ漢字」第221回は、「牛蒡」をご紹介します。実際に読み書きなどをしていただき、漢字への造詣を深めてみてください。
「牛蒡」とは何と読む?
「牛蒡」の読み方をご存知でしょうか? 「うしぼう」ではなく……
正解は……
「ごぼう」です。
『小学館デジタル大辞泉』では、「キク科の二年草。高さ約1.5メートル。主根はまっすぐ地中に伸びる。葉は心臓形で、裏面に灰白色の綿毛が密生する。夏、紫色のアザミに似た花をつける。ヨーロッパ・ヒマラヤ・中国に分布し、日本では古くから栽培。根は食用。種子は、漢方で浮腫(ふしゅ)などの治療薬。」と説明されています。
辞書の説明を読むと少々難解に感じますが、私たちの食卓でも馴染みのある食材ですね。日本では自生しておらず、千数百年前に中国から渡来したといわれています。
牛蒡と書いて、古くは「うまふふき」、「うまぶふき」と呼ばれていました。なぜ“牛”という漢字が使われているのか? 次項の由来で紹介します。
「牛蒡」の由来は?
牛蒡(うまふふき)の由来には、諸説あります。一つ目の説は、「ウマ」は「大」の意味を表す(新井白石著の『東雅』より)というものです。中国では草木の大きなものを表すとき、「牛」という字を使います。
二つ目の説には、「ウマフキ(美蕗)」の意味で葉が蕗に似ているから(契沖著の『和字正濫鈔』より)というものもあるようです。
豊臣家滅亡と関わりがある!?「堀川ごぼう」の始まり
堀川ごぼうといえば、「京の伝統野菜」として京都府に認定されている京野菜です。そんな堀川ごぼうの始まりをご存じでしょうか? 堀川ごぼうは、偶然に生まれたものだといわれています。
天下統一を果たした豊臣秀吉は、京都の堀川近くに聚楽第(じゅらくだい)を建てました。しかし、豊臣家の滅亡後、その場所は町衆のゴミ捨て場となったのです。ゴミ捨て場というと汚く感じるかもしれません。しかし、当時のゴミは今とは違い、落ち葉、炭、木炭、しじみの貝殻、魚の骨、野菜屑……など肥料の宝庫でした。
それが堆肥となり、一緒に捨てられていた牛蒡が年を越して巨大化しました。それが堀川ごぼうの始まりだといわれています。年越させて大きく成長させる独特の栽培法は、400年近い歴史があるという説があるようです。
堀川ごぼうは、繊維が柔らかく独特の風味や香りがあります。厚く切って煮るだけでも美味しいですね。ぜひ、こうした歴史を感じながら食してみてはいかがでしょうか?
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いかがでしたか? 今回の「牛蒡」のご紹介は、皆さまの漢字知識を広げるのに少しはお役に立てたでしょうか? 身近な食材にも、いわれや歴史があるものです。ぜひ、この機会に調べてみてはいかがでしょうか。
文/京都メディアライン
HP:https://kyotomedialine.com FB
参考資料/『デジタル大辞泉』(小学館)
『日本国語大辞典』(小学館)
『世界大百科事典』(平凡社)