戦後日本で展開されたカウンターカルチャーを牽引して以降、88歳まで旺盛な創作活動を続けた田名網敬一。

その長いキャリアを通して多種多様なクライアントワークやコラボレーションを行ってきました。Mary Quant、adidas、GENERATIONS from EXILE TRIBE、RADWIMPSなどはその一例です。

また近年、海外文化を独自に受容した戦後日本の作家として世界的に評価があがり、ニューヨーク近代美術館、ウォーカー・アート・センター、シカゴ美術館、香港のM+、ハンブルガー・バーンホフにも作品が所蔵されています。

田名網敬一《死と再生のドラマ》 2019年
顔料インク、アクリル・シルクスクリーン、ガラスの粉末、ラメ、アクリル絵具/カンヴァス
(C)Keiichi Tanaami /Courtesy of NANZUKA

国立新美術館で開催の「田名網敬一 記憶の冒険」は、田名網敬一初の大規模回顧展です。(8月7日~11月11日)

本展の見どころを、国立新美術館の特定研究員、小野寺奈津さんにうかがいました。

「本展は1936年に東京・京橋で生まれ、デザインと美術を股にかける多様な活動を続けてきた田名網敬一の初となる大規模回顧展となります。

幼少期に戦争を体験した田名網は、アメリカから入って来た映画や漫画といったカルチャーに大いに影響を受けました。武蔵野美術大学卒業後にグラフィックデザイナーとして活動を開始するなかで、ポップアートの手法にも強い共感を覚え、1960年代中頃からシルクスクリーンや複製技術を用いた作品の制作を始めます。

田名網敬一《ORDER MADE!!》 1965年
シルクスクリーン/紙
(C)Keiichi Tanaami /Courtesy of NANZUKA

1967年に制作されたカラフルな色彩の「NO MORE WAR」シリーズは、アートとカウンターカルチャーを扱うアメリカの雑誌『Avant Garde』が主催した反戦ポスターのコンテストで優秀作に選ばれました。

田名網敬一《NO MORE WAR》 1967年
シルクスクリーン/紙
タグチ・アートコレクション蔵
(C)Keiichi Tanaami /Courtesy of NANZUKA

特に1980年代以降は、現在に至るまで幼少期の記憶や体験を元に、多様なメディアを用いて精力的に作品制作を続けています。

田名網敬一《金魚》 1982年
アクリル絵具、インク、色鉛筆/紙
(C)Keiichi Tanaami /Courtesy of NANZUKA

本展では、記憶のコラージュのようにして作られる田名網の作品を通じて、作家本人の過去と現在を追体験するような「記憶の冒険」を楽しんでいただければと思います」

田名網敬一《森の掟》 2024年
顔料インク、アクリル・シルクスクリーン、ガラスの粉末、ラメ、アクリル絵具/カンヴァス
(C)Keiichi Tanaami /Courtesy of NANZUKA

最新作の大作、《森の掟》も展観されます。ぜひ会場でじっくりご鑑賞ください。

【開催要項】
田名網敬一 記憶の冒険
会期:2024年8月7日(水)~11月11日(月)
会場:国立新美術館 企画展示室1E
住所:東京都港区六本木7-22-2
電話:050・5541・8600(ハローダイヤル)
展覧会公式サイト:https://www.nact.jp/exhibition_special/2024/keiichitanaami/
開館時間:10時~18時、金・土曜日は~20時(入場は閉館30分前まで)
休館日:火曜日
料金:公式サイト参照
アクセス:公式サイト参照

取材・文/池田充枝

 

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