静謐で端正な風景画で人々を魅了する東山魁夷は明治41年(1908)生まれ。18歳で東京美術学校日本画科に入学、昭和6年に同校を卒業した2年後の昭和8年、ドイツに留学。2年間の滞欧で西洋美術を学んだことや、その後の海外への写生旅行が東山の日本画に大きな影響を及ぼしたことはいうまでもありません。一方で、日本各地の風景の取材を生涯重ね、そこに描く季節感の表現を重要なテーマのひとつとしていました。

昭和44年、文化勲章受章。皇居新宮殿壁画、唐招提寺御影堂障壁画制作など日本画家としての大業を果たして平成11年、90歳でこの世を去りました。

山種美術館の特別展「没後25年記念 東山魁夷と日本の夏」は東山魁夷の没後25年の節目を記念して開かれる展覧会です。(7月20日~9月23日)

東山魁夷《緑潤う》 1976(昭和51)年 紙本・彩色 山種美術館蔵

本展の見どころを、山種美術館の学芸員、南雲有紀栄さんにうかがいました。

「四季を通じて自然との対話を重ね、詩情豊かに描いた東山魁夷(1908-1999)。「昭和の国民画家」と称され、没後四半世紀を経た今も人々から愛されています。このたび、山種美術館では所蔵する魁夷コレクションを全点公開し、併せて夏をテーマにした名作や、涼しさの感じられる優品を選りすぐり、ご紹介する特別展を開催します。

本展で特に注目すべきは、普遍的な日本の海のイメージと伝統的な日本絵画の装飾性が融合した幅9メートル超の大作《満ち来る潮》です。皇居新宮殿を飾る魁夷の代表作と同趣作品を、ひろく人々が鑑賞できるよう、当館初代館長・山﨑種二が画家へ制作を依頼した作品です。

東山魁夷《満ち来る潮》 1970(昭和45)年 紙本・彩色 山種美術館蔵

また、作家・川端康成の言葉を契機に、魁夷が京都の風情と季節のうつろいを格調高く描いた連作「京洛四季」(《年暮る》含む4点)も見どころの一つ。

東山魁夷《年暮る》 1968(昭和43)年 紙本・彩色 山種美術館蔵

魁夷の作品と併せて、歌川広重の浮世絵《名所江戸百景 大はしあたけの夕立》、青い浴衣姿の女性の一瞬のたたずまいを捉えた上村松園の《蛍》など、夏にふさわしい目にも涼やかな優品を取り揃えています。暑い夏の日に、爽やかなひと時を過ごしていただければ幸いです。

歌川広重《名所江戸百景 大はしあたけの夕立》1857(安政4)年
大判錦絵 山種美術館蔵 ※8月20日~9月23日展示
上村松園《蛍》 1913(大正2)年 絹本・彩色
山種美術館蔵

加えて、夏の花・蓮を繊細な技法「截金(きりかね)」で描く様子をご紹介するオンライン講座も開催。ぜひご注目ください!」 

並木秀俊《不忍蓮夜図》 2024(令和6)年 桐板・截金、彩色 個人蔵

オンライン講座「輝きを絵画へ-箔で描く日本画-」の講師、並木秀俊氏は截金と日本画を組み合わせて独自の表現を追求する今注目のアーティストです。配信のお申し込みもぜひ!!

【開催要項】
特別展 没後25年記念 東山魁夷と日本の夏
会期:2024年7月20日(土)~9月23日(月・休)
会場:山種美術館
住所:東京都渋谷区広尾3-12-36
電話:050・5541・8600(ハローダイヤル)※受付時間9時~20時
公式サイト:https://www.yamatane-museum.jp/
開館時間:10時~17時(入館は16時30分まで)
休館日:月曜日(ただし8月12日、9月16日、9月23日は開館)、8月13日(火)、9月17日(火)
料金:公式サイト参照
アクセス:公式サイト参照
オンライン講座:https://kaiiandsummer.peatix.com

取材・文/池田充枝

 

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