辞意を表明する道長の思惑
I:さて、ということで、東三条院詮子(演・吉田羊)の病気平癒祈願のために行なわれた大赦で京に召還された藤原伊周も一条天皇と中宮定子の側近として「復帰」する様子が描かれました。やはり、一条天皇としては、左大臣道長を牽制する意味でも中関白家の復権を望んでいたのでしょう。
A:本来であれば、道長のイライラというか怒りがふつふつと湧き上がる状況なわけです。ところが、『光る君へ』の道長は表面上冷静に立ち振る舞っています。ここは、洪水への対応が疎かになってしまったということで、怒りを抑えながらも辞意を表します。
I:さすがにここで左大臣に辞職されては貴族社会の中で立ち行かないということは、一条天皇も理解していたようです。一条天皇にとって道長は叔父ですが、伊周は中宮定子の兄でしかありませんから。さて、そうした中で、宣孝からまひろと結婚すると聞かされた道長はまひろへの祝いの品を届けます。百舌彦(演・本多力)がすっかり立派になっていたのが印象的でした。
A:「長い月日が流れましたので」という百舌彦の言葉が印象的で、なんだかこのシーンがジーンときました。時の流れは確実に人を変えていきます。人生いろいろ。以前より立派になる人もいれば零落する人もいますから 。
I:さて、祝いの品に添えられた書状が道長の直筆でないことでまひろの心がざわめいたようです。ここでまひろは文をしたためます。「こじらせた?」と思って見ていると、やって来たのは案の定、道長ではなく宣孝でした。
A:ああ、ここでもやはり道長とのすれ違い。思いが強いだけにすれ違うって、よくありますよね……。
I:ここでまひろは「私は不実な女ですけれど」と宣孝の求婚への答えを伝えます。妻が何人もいる年上の男性なのに……。道長のことはどうするの? 道長との恋は終わりなの? 「まひろ、こじらせないで」と思ってしまいました。
A:いろいろな思いがぐるぐるとめぐってくる場面でしたね。そして、次回の予告では、道長と源倫子(演・黒木華)の娘彰子(演・見上愛)が成長して登場するようです。
I:固く結ばれた一条天皇と中宮定子に彰子がどう割って入るのか。なんだかゾクゾクしてきましたね。
●編集者A:月刊『サライ』元編集者(現・書籍編集)。「藤原一族の陰謀史」などが収録された『ビジュアル版 逆説の日本史2 古代編 下』などを編集。古代史大河ドラマを渇望する立場から『光る君へ』に伴走する。
●ライターI:文科系ライター。月刊『サライ』等で執筆。『サライ』2024年2月号の紫式部特集の取材・執筆も担当。お菓子の歴史にも詳しい。『光る君へ』の題字を手掛けている根本知さんの仮名文字教室に通っている。猫が好き。
構成/『サライ』歴史班 一乗谷かおり