数多の精緻な部品が組み合わさり時を刻む──その機構は変わらねど“令和の技術と精度”が息づく、現代日本の機械式の銘品を紹介する。

ミナセ/VM15-M01NBL-SSB

7つの窓から差し込む光が文字盤に多彩な陰影をもたらし、角度により異なる印象を与える。上下が内側に湾曲したケースや多列のブレスレットも造形美に溢れ、刻みを入れたリュウズは指先に馴染む。VM15-M01NBL-SSB、自動巻き(キャリバーKT7002)、42時間パワーリザーブ、ステンレススティールケース(37.4×46.5mm)、ステンレススティールブレスレット、5気圧防水、66万円。
問い合わせ先/ミナセお問い合わせ窓口 電話:04・7192・6345

ひとつの工具から始まった、日本の伝統が息づく機械式への大いなる挑戦

時計メーカーには長い歴史に培われた印象がある。その一方で近年、国内でもいくつか新進の機械式ブランドが誕生している。いずれも小規模ながら独創的で、本格的な技術や仕上げは大手さえも凌駕する。それは世界有数の時計先進国として、国産時計の多様性と豊潤を象徴する。先鞭となったのが2005年に設立されたミナセだ。1963年創業の切削工具メーカー、協和精工を母体にした異業種からの新規参入である。

滑らかなカーブを描く前面の風防に対し、ケースはシャープな面で構成し、細部に異なる磨きを施すことでメリハリを強調する。

精密加工用ドリルなどを専門にしていた同社が、あるとき、時計メーカーの依頼で独自の段付きドリルを開発した。これが高い評価を得たことで時計業界との結びつきが深まり、ケースやブレスレット製造へと発展。完成品の製造委託が始まり、オリジナルブランドへの扉を開いたのである。

裏蓋のサファイアガラスからは四方をネジで留めたムーブメントを見ることができる。巻き上げをするローター( 回転錘)にも精細な型抜き装飾を施す。

イメージしたのは日本庭園

その成り立ちから強みとする切削やプレス、研磨の技術を余すことなく注いだのが、本作のセブンウインドウズだ。複雑な三次元曲線からなるケースやブレスレットを、筋目と鏡面の異なる仕上げが美しい造形を際立たせる。まさに金属加工の玄人の本領発揮だ。

モデル名の由来となったのが、前面、裏蓋と側面に配した計7枚のサファイアガラスである。普段は見ることのできない角度から内部構造を見て楽しめる。イメージしたのは、雪見障子越しに眺める日本庭園の風景という。

文字盤の外周を覆う爪のような目盛りは日本庭園の飛び石、そして先端を曲げた分針は鹿威しから着想を得てデザインしている。

そこから一目瞭然となるのが、四方を留めてケース内で中空に浮かび上がらせたムーブメントだ。ケース・イン・ケースと名付けたユニークな二重構造で、複雑かつ精緻なデザインと立体構造が実現できたのも、工具から触発される発想と、それを手にした人間が生み出す無限の可能性があってのこと。そのブランドロゴに、時計作りの原点となった段付きドリルを象るのも納得できるだろう。

※この記事は『サライ』本誌2024年6月号より転載しました。

 

関連記事

ランキング

サライ最新号
2025年
1月号

サライ最新号

人気のキーワード

新着記事

ピックアップ

サライプレミアム倶楽部

最新記事のお知らせ、イベント、読者企画、豪華プレゼントなどへの応募情報をお届けします。

公式SNS

サライ公式SNSで最新情報を配信中!

  • Facebook
  • Twitter
  • Instagram
  • LINE

小学館百貨店Online Store

通販別冊
通販別冊

心に響き長く愛せるモノだけを厳選した通販メディア

花人日和(かじんびより)

和田秀樹 最新刊

75歳からの生き方ノート

おすすめのサイト
dime
be-pal
リアルキッチン&インテリア
小学館百貨店
おすすめのサイト
dime
be-pal
リアルキッチン&インテリア
小学館百貨店