今もっとも人気のある浮世絵師のひとりと言っても過言ではない歌川国芳。猫好きで知られる国芳ですが、奇想の絵師として多彩なジャンルで奔放な発想を発揮しました。

太田記念美術館の「国芳の団扇絵-猫と歌舞伎とチャキチャキ娘」展は、夏にむけて団扇絵(うちわえ)を取りあげ、団扇絵における国芳の世界を紹介する展覧会です。(会期:6月1日~7月28日)

「鏡面シリーズ 猫と遊ぶ娘」弘化2年(1845)頃 前期展示

本展の見どころを、太田記念美術館の学芸員、赤木美智さんにうかがいました。

「団扇絵とは、実際に骨に貼り団扇を作るための浮世絵のことです。団扇は江戸っ子にとって夏の暑さをしのぐための必需品でしたが、同時にデザインを楽しむお洒落のアイテムであり、また歌舞伎ファンにとっては贔屓の役者を身近に感じることができる大事なグッズでもありました。

「ちょぼくれおはま 瀬川路之助 花見がへり 沢村訥升」天保3年(1832)前期展示
「船弁慶」天保11年(1840)頃 後期展示

江戸時代後期に活躍した歌川国芳(1797~1861)は、その団扇絵を積極的に手がけた浮世絵師の一人でした。600点を超える現存作品からは、国芳のユーモラスな戯画や、役者の特徴を的確にとらえた役者絵、女性の表情をいきいきと描いた美人画が、江戸っ子の日用品として愛されていた様子がうかがわれます。

「絵鏡台 合かか身 猫/しし・みみづく・はんにやあめん」天保13年(1842)頃 前期展示
裏面とされる作品には影絵が表される。

世界で初めて、国芳の団扇絵だけをご紹介する本展では220点をご覧いただきますが、擬人化された猫が魅力的な「猫の曲まり」はじめ、なんと初出品作品は約100点。本来、消耗品であった団扇絵の美品が多く集まるだけでも異例のことであり、この貴重な機会に、知られざる国芳団扇絵の世界に存分に触れていただければ幸いです」

「猫の曲まり」天保12年(1841)頃 後期展示

初出品作品が約半数をしめる稀有な展覧会です。ぜひ会場でご堪能ください。

【開催要項】
国芳の団扇絵-猫と歌舞伎とチャキチャキ娘
会期:2024年6月1日(土)~7月28日(日)
   前期6月1日(土)~6月25日(火)・後期6月29日(土)~7月28日(日)
   ※前期・後期で全点展示替え
会場:太田記念美術館
住所:東京都渋谷区神宮前1-10-10
電話:050・5541・8600(ハローダイヤル)
公式サイト:http://www.ukiyoe-ota-muse.jp/
開館時間:10時30分~17時30分(入館は17時まで)
休館日:月曜日(ただし7月15日は開館)、6月26日(水)~28日(金)、7月16日(火)
料金:公式サイト参照
アクセス:公式サイト参照

取材・文/池田充枝

 

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