一説によれば、日本に眠る埋蔵金の総額は150兆円にのぼるとされる。トレジャーハンターの八重野充弘さんが長年追い続ける、有力な「埋蔵金伝説」の数々とは。

「徳川埋蔵金伝説」を追い、群馬県の山中を仲間たちと調査する八重野さん(左端)。「真実に近づいている」と語気を強める。
旧日本軍のお宝が隠されているとの情報を得て、福井県内の山中で縦坑に挑む八重野さんら。

八重野充弘さん(76歳)は、日本では珍しい「トレジャーハンター」である。1974年に、熊本県天草下島で天草四郎の財宝探しに関わって以来、魅了されてきた。

「徳川埋蔵金伝説などは、テレビで特番が組まれることも多いので、耳にしたことがある方もいるでしょう。この話だけでなく、日本各地には膨大な数の埋蔵金伝説が伝わっています」 

八重野さんは、その理由として日本の金・銀の産出量の多さをあげる。江戸時代には700を超える鉱山があり、佐渡金山では年間400kg以上の金が産出されていた。

「大名や豪商たちは、いざというときのために金銀を埋蔵しました。掘り出されなかったそれらが、いまだ地中に眠っていてもおかしくはありません」

実際、1963年に発見された埋蔵金は、世間を驚かせた。江戸で下り酒問屋を営んでいた豪商・鹿嶋家の屋敷跡から、1900枚の小判と7万8000枚の二朱金が発見された。現在の古銭相場で約8億円の価値を付ける、大発見だった。

「歴史学者・桑田忠親はかつて、未発見の埋蔵金の総額は時価150兆円に達するのではないかと著書に記しています」

埋蔵金伝説には「黄金の国ジパング」の名残がある。

八重野充弘さん。1947年、熊本県生まれ。日本トレジャーハンティング・クラブ代表、作家。立教大学卒業。1974年から50年近く、埋蔵金伝説を追って全国各地を調査、発掘している。

地元で語り継がれる伝説

八重野さんは、古文書などの記録や、地元の古老たちの話を照らし合わせて、埋蔵金伝説の真偽を探っていく。

「どんな小さな町を訪れても、必ず埋蔵金伝説を耳にします。町の数だけ、伝説は存在するのです」

1889年になって市制・町村制が施行されたが、そのときの市町村の数は、1万5889だ。戦後の1945年の時点でも1万520市町村ある。単純に計算しても、1万を超える埋蔵金伝説があり、この中に真実があっても不思議ではないと八重野さんはいう。

「大半は、長者伝説のようなお伽噺のようなものですが、中には、歴史的にも、記録と付き合わせても信憑性の高い伝説がある。決して絵空事ではありません」

現在、八重野さんがとくに注目する埋蔵金伝説は7つある。

八重野さん注目の「七大埋蔵金伝説」

1.徳川幕府の御用金(群馬県片品村)

大老井伊直弼によって徳川幕府の御用金約400万両が赤城山付近(群馬)に隠されたという。目撃情報も多数あり、テレビでも度々取り上げられた。八重野さんは片品村で、江戸時代に閉山した鉱山を発見。地元の有力情報と重ね、ここに埋蔵金があると考えている。

2.旧日本軍の隠匿物資(福井県敦賀市)

戦時下、中国大陸から旧日本軍が掠奪した時価3億円の美術工芸品を、福井県敦賀市の山中に隠したという言い伝えがある。実際、埋もれていた人為的な縦坑が発見され、八重野さんは現地調査を続けている。

3.武田信玄の軍用金(山梨県富士河口湖町)

武田信玄は各地に軍用金を秘匿したとされる。富士の樹海に迷い込んだ村人が穴底に金貨の壺を発見。村人を呼び集め戻ろうとするも場所がわからなくなっていた。樹海には武田の石塁跡もあり、真実味を帯びている。

4.結城晴朝の黄金(栃木県小山市)

結城家の初代・朝光は、源頼朝の奥州藤原攻めに従い、そのときの武功で奥州藤原氏の黄金のほとんどを褒美に得たとされる。伝説によれば、末裔・晴朝が埋めた黄金の総量は380トン。旧結城領のどこかに眠るといわれる。

5.海賊キッドの宝(鹿児島県十島村)

17世紀末に実在した英国の海賊ウィリアム・キッド。彼には奪った財宝を一時的に近くの島に隠す習癖があった。1937年に発見された、キッドが描いたとされる宝島の地図は、トカラ列島の宝島と瓜二つだ。

6.尾張徳川家の埋蔵金(愛知県名古屋市)

徳川家康が豊臣家を滅ぼし奪った大坂城の金銀は、御三家に30万両ずつ分配されたが、尾張徳川家は、祈願寺にそれを隠したと伝わる。お堂の地下まで続く横穴が確認されており、調査が待たれる。

7.毛利元就の埋蔵金(広島県呉市)

瀬戸内海の島に、毛利氏の子孫が代々住職を務める寺がある。ここには戦国大名毛利元就の隠し財(石見の銀)が眠ると語り継がれてきた。寺にしては異様な武者返しの石垣があり、何かを守っているようでもある。

* * *

「最大の注目は、徳川埋蔵金伝説(1.の徳川幕府の御用金)でしょう。400万両もの御用金を赤城山(群馬)に運んだといわれ、有力な目撃情報もあります」

八重野さんは、赤城山は中継点に過ぎず、そこからさらに奥に運び込まれたと考える。

「実は10数年前に亡くなった片品村の老人から、“鉱山の坑道内で千両箱を発見した”という伝言を受け取っています。彼は、ネパールに学校を5校建てるなど、多額な援助をしていたのですが、その資金が持ち返ったひとつの千両箱から出ていたとの話がある」

八重野さんはすでに、確度の高い旧鉱山を発見している。“世紀の発見”は近いのかもしれない。

ドイツ製金属探知機を手に、地中からの反応を確かめる八重野さん。古文書などの記録と科学的調査の合わせ技で真相に迫る。

トレジャーハンティングの本質

八重野さんは、日本トレジャーハンティング・クラブの代表を務めるが、会員は70余人。

「トレジャーハンティングは、全財産をつぎ込むような博打ごとではありません。歴史推理の知的ゲームであり、野外でいい汗をかくスポーツです。現場で野営しますが、仲間と食べる野外の飯のうまいこと。血眼になってお宝を探すのではなく、“浪漫”を感じながら楽しく活動しています」

写真協力/八重野充弘

※この記事は『サライ』本誌2024年6月号より転載しました。

『サライ』2024年6月号大特集は「この国は『黄金』でできている」。

 

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