愛らしいから、癒されるから、生態の不思議に迫りたいから……など、動物園や水族館に出かける動機は人それぞれ。贔屓に出会える“いきもの”についてとくと紹介。

ほぼ生きたままの姿を保存したメンダコのプラスティネーション(樹脂封入)標本や体長50cmものダイオウグソムシなど展示が興味深い。

【深海生物とは】
特徴:水深200m以上の海(深海)に棲むいきもののこと。太陽光がほぼ届かず、光合成を行なう植物やプランクトンが生育できないため、解明されない事象が多い。

沼津港の一角に、巨大なカニのオブジェを掲げた建物がある。2011年に開館した沼津港深海水族館は日本で初めて深海生物にスポットを当てて紹介する水族館だ。

トリノアシ
海草のようだが、ウニやヒトデと同じ棘皮動物でウミユリの仲間。5億年前から姿が変わらない。水深200m程度の海底に棲息。
ミドリフサアンコウ
小さなトゲに覆われた体に、黄色で縁取られた緑色の斑点がある。全長は10cm前後〜30cmほど。時折、フグのようにふくらむ。
イガグリガニ
鋭く硬いトゲに覆われ、若い個体ほどこのトゲが長い。正式にはタラバガニ科でヤドカリの仲間。水深180〜400mの泥底に棲息。

「深海には生態が解明されていない生物が多く、水温や水圧、明るさなどの生育環境を、地上で再現することが難しいのです。手探りの状態で飼育しながら、データを蓄積しています」と話してくれたのは、飼育員の塩崎洋隆さんだ。

深海生物はとてもデリケートなこともあり、捕獲や輸送が難しい。だが、同館では最深部2500mの駿河湾に近い立地を生かし、地元漁師の底曳き網に珍しい生物がかかると、こちらに運ばれる態勢が取られている。

その代表が、世界中でも飼育例がほとんどないメンダコ(※)。最長52日間の飼育と、世界で2例目となるふ化に成功した実績がある。

シーラカンスの謎に迫る

2体の冷凍と3体の剥製標本を展示する「シーラカンスミュージアム」も併設。午前11時から、飼育員がシーラカンスについて解説。

3億5000万年前から姿を変えず生き続け、「生きる化石」と称されるシーラカンスも深海魚で、絶滅危惧種よりさらに危機的状況にある絶滅寸前種である。

シーラカンスの冷凍標本を展示する世界唯一の場であり、見学できるのは1981年に日本の学術調査隊がアフリカ・コモロ諸島で、現地と協力して捕獲したもの。5体の剥製標本を中心に、臓器やウロコの標本、現地で撮影された遊泳映像などを見ることができる貴重な場所だ。深海には生命誕生の謎を解くカギが眠っているといわれる。その神秘の世界をのぞいてみたい。

(※メンダコの展示の有無はウェブサイトで確認を。http://www.numazu-deepsea.com

2011年の開館時より深海魚の飼育員を務める塩崎洋隆さん。1日に3回実施されるシーラカンスや深海魚の解説も担当する。

沼津港深海水族館

静岡県沼津市千本港町83
電話:055・954・0606
開館時間:10時〜18時(入館は17時30分まで)
休館日:無休
入館料:1800円
交通:JR沼津駅から路線バスで約15分、沼津港下車徒歩約5分

取材・文/永田さち子 撮影/泉 健太

※この記事は『サライ』本誌2024年5月号より転載しました。

『サライ』2024年5月号の特集は『大人が行きたい「動物園」と「水族館」』。

 

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