【重文】『四季花鳥図屛風』
【重文】『益田兼堯像』
雪舟絵画の真髄ここにあり
山下裕二さんが2019年に上梓した『未来の国宝・MY国宝』。山下さんが考える“遠くない将来に国宝指定されるに違いない作品、また個人的に極めて思い入れが深く国宝にしたい作品”が数多掲載されているが、雪舟についても「間違いなく未来の国宝」という作品があると語る。それがこの2作。
「『四季花鳥図屛風』については本の中で《これぞ雪舟畢生の大作。執拗に絡みつく枝ぶり。真っ黒い墨による筆勢を強調した岩。「人間・雪舟」の身ぶりがはっきり見て取れる》と既に紹介しています。さらに今回、作品を俯瞰してみて『益田兼堯像(ますだかねたかぞう)』も未来の国宝だなと思いました。同時代に、こんなにリアルな肖像画は他にありません。山水に限らず、これだけ幅広い画題で力量を発揮する画家も珍しい。雪舟の凄さを改めて実感します」
●山下裕二さん(明治学院大学教授、美術史家・65歳)
『倣夏珪山水図』
【重文】『倣李唐牧牛図(牧童)』『倣李唐牧牛図(渡河)』
【重文】『倣梁楷黄初平図』
【重文】『倣玉澗山水図』
これも雪舟、あれも雪舟|数少ない真筆の中でも多彩な画業を示す
国宝、重文指定の作品を見るだけでも、山水、花鳥、人物、実景描写、更には抽象表現と、実に様々なタイプの画才を見せる雪舟。その多彩さを端的に表すのがここに紹介する通称「倣古図(ほうこず)」シリーズだ。
当時、日本における最高の絵画とは中国宋代の画家たちによる水墨画だった。そこで雪舟はこのような見本帖をつくり「私に頼めば、夏珪風でも李唐風でもなんでもお望み通り」と顧客に見せたのだ。売れっ子画家となるには、顧客のニーズに応えて様々なスタイルで描き分ける能力を備えている必要があったことの証でもある。
●掲載作品のうち、作家名のないものはすべて「雪舟」の作品です。また、特に明記した作品を除くすべての作品は京都国立博物館で開催予定の特別展「雪舟伝説」の出品作です。
※この記事は『サライ』本誌2024年5月号より転載しました。