2024年は、近代日本を代表する知の巨人にして文人画家である富岡鉄斎(1836-1924)の没後100年にあたります。

京都の法衣商の家に生まれた鉄斎は、学問を重んじる家風のもと、若い頃から和漢の古典や諸学に親しみ、そのなかで育まれた膨大な知識、文人としての素養を生涯の書画制作の礎としました。

今日残る鉄斎作品の筆の躍動、画中に付される跋文、そして多彩なモチーフは、一側面からでは語れない様々な鉄斎の姿、その生きた軌跡を私たちにありありと伝えてくれます。

寿老図 大正3年(1914)大和文華館蔵

大和文華館で開催の「特別企画展 没後100年 富岡鉄斎 ―知の巨人の足跡―」は、館蔵作品を中心に、生涯にわたる精力的な芸術活動を紹介する展覧会です。(4月12日~5月19日)

本展の見どころを、大和文華館の学芸員、都甲さやかさんにうかがいました。

蘇子笠屐図 大正6年(1917)
清荒神清澄寺鉄斎美術館蔵

「生涯みずからの本分は儒学者であるとし、豊かな学識に基づく多彩な絵画を描き続けた鉄斎ですが、特に80歳を過ぎてからの、型破りな構成と奔放な筆遣い、メリハリある墨の諧調を特徴とする山水画は、鉄斎芸術の真骨頂として、今も多くの人々を魅了しています。本展覧会では、様々な鉄斎山水を一堂に見ることができるのも、見どころの一つです。 

掃蕩俗塵図
大正7年(1918)83歳
紙本墨画淡彩 128.8×43.7cm
大和文華館蔵 

ご紹介する「掃蕩俗塵図」(大和文華館蔵)は、83歳の時の作で、晩年の鉄斎らしい墨遣いと、透明感のある美しい色彩が渾然一体となり、神秘的で重厚感のある山容を形作るエネルギッシュな作品です。山中には、尾根にそって花を咲かせる木々、滝、家屋、四阿などもみえ、家屋の中にいる二人の人物は、鉄斎とその妻・春子との説もあります。画題の「掃蕩俗塵」は、俗なけがれを払い除くことを意味し、明の儒学者である王陽明『燕居筆記』の記述に由来するとみられます。鉄斎の願う理想郷が、ここに表されているといえるでしょう」

車海老図 明治18年(1885) 大和文華館蔵

人物・山水・植物・動物など多彩なモチーフ、力強く個性ある書跡。迫力あふれる会場にぜひ足をお運びください。

【開催要項】
特別企画展 没後100年 富岡鉄斎 ―知の巨人の足跡―
会期:2024年4月12日(金)~5月19日(日)
会場:大和文華館
住所:奈良県奈良市学園南1-11-6
電話:0742・45・0544
公式サイト:https://www.kintetsu-g-hd.co.jp/culture/yamato/
開館時間:10時~17時(入館は16時30分まで)
休館日:月曜日(ただし4月29日、5月6日は開館)、4月30日(火)、5月7日(火)
料金:公式サイト参照
アクセス:公式サイト参照

取材・文/池田充枝

 

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