吉原の歴史は、江戸初期の元和3年(1617)に幕府が許可した唯一の遊廓として始まりました。その場所は、まだ葭(よし)が一面に生えていたことから「よしわら」と呼ばれるようになったといわれます。その後、明暦年間に現在の浅草あたりに移転し、明治時代に至るまで日本最大の遊廓として栄えました。

歌川国貞《青楼遊廓娼家之図(青楼二階之図)》文化10年(1813) 大英博物館蔵
(C)The Trustees of the British Museum.

幕府公認の格式に見合うよう、美しく教養がある遊女たちが客を迎えた吉原遊郭は、最盛期には数千人の遊女がいたといわれます。客に浮世を忘れさせる華やかな趣向が凝らされた吉原は、多くの浮世絵に描かれ、江戸文化の発信地となりました。

喜多川歌麿《納涼美人図》寛政6-7年(1794-95)頃
千葉市美術館蔵 展示期間4月23日(火)~5月19日(日)

東京藝術大学大学美術館で開催の「大吉原展」は、吉原の歴史と文化を約230件の展示品で検証します。(3月26日~5月19日)

本展の見どころを、東京藝術大学大学美術館教授の古田亮さんにうかがいました。

「本展は江戸の吉原をテーマとして、描かれた美術作品を多数集めた展覧会です。

幕府が唯一公認した吉原遊廓では別格のしきたりや伝統がありました。その時だけ桜の樹を植える春の花見はその一つです。

喜多川歌麿《吉原の花》寛政5年(1793)頃 ワズワース・アテネウム美術館蔵
Wadsworth Atheneum Museum of Art,Hartford.
The Ella Gallup Sumner and Mary Catlin Sumner Collection Fund

アメリカから里帰りする歌麿の大作《吉原の花》は、あえて女性たちだけの花見の宴を描いた作品です。実際の光景ではありませんが、ある意味では虚構で飾られた吉原の真の姿を描いている、ということもできるでしょう。

高橋由一《花魁》 重要文化財 明治5年(1872)東京藝術大学蔵

高橋由一の《花魁》は、明治5年、廃れていく吉原の姿を当時全盛だった実在の花魁を描くことで記録に留めようと描かれたものです。今回の展示に合わせて修復され、制作時に近い色彩が蘇りました。

「悪所」と呼ばれたとおり吉原には負の遺産として受け止めなければならない部分がありますが、同時にそこにはアート(人工/芸術)の場としての遺産がありました。それを物語る美術作品に目を向けることによって、吉原を知る機会となれば幸いです」

溪斎英泉《新吉原全盛七軒人 松葉屋内粧ひ にほひ とめき》
文政(1818-30)後期
山口県立萩美術館・浦上記念館蔵
展示期間:4月23日(火)~5月19日(日)

吉原の妓楼の再現模型や辻村寿三郎の人形など、立体的な展示も会場を盛り上げます。ぜひ足をお運びください。

【開催要項】
大吉原展 
会期:3月26日(火)~5月19日(日)
会場:東京藝術大学大学美術館
住所:東京都台東区上野公園12-8
電話:050・5541・8600(ハローダイヤル)
公式サイト:https://daiyoshiwara2024.jp/
開室時間:10時~17時(入館は16時30分まで)
休館日:月曜日(ただし4月29日、5月6日は開館)、5月7日(火)
料金:公式サイト参照
アクセス:公式サイト参照

取材・文/池田充枝

 

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