最近、パソコンやスマートフォンの普及により、自ら字を書く機会はめっきり減少してきました。その影響からか「読める、けれども、いざ書こうとすると書けない漢字」が増えていませんか? 以前はすらすらと書けていたのに、と書く力が衰えたと実感することもあります。

脳トレ漢字の記事を読みながら漢字の読み書きをすることで、脳のトレーニングとなります。また、この記事を通じて、読むこと・書くこと・漢字の意味を深く知り、漢字の能⼒を高く保つことにお役立てください。

「脳トレ漢字」第190回は、「蒔絵」をご紹介します。漆工芸の技法である「蒔絵」。器物を装飾するため、古くから活用されてきました。実際に漢字の読み書きなどをしていただき、漢字への造詣を深めてみてください。

「蒔絵」とは何とよむ?

「蒔絵」の読み方をご存知でしょうか? 「ときえ」ではなく……

正解は……
「まきえ」です。

『小学館デジタル大辞泉』では、「器物の表面に漆で文様を描き、金・銀などの金属粉や色粉を蒔きつけて付着させる、日本独自の漆工芸。」と説明されています。漆で文様を描いた後、上から金粉などを蒔いて磨く技法です。

蒔絵は、「平蒔絵」「高蒔絵」「研ぎ出し蒔絵」の三種類に大別されます。また、文様以外の地の装飾法である地蒔には、「沃懸地(いかけじ)」「平目地(ひらめじ)」「塵地(ちりじ)」「梨子地(なしじ)」などがあるそうです。

蒔絵粉を使って行われますが、粉の成分は主に金銀・青金(金と銀の合金)・白鑞であるとされます。器物を美しく彩る蒔絵。蒔絵の歴史は古く、奈良時代までさかのぼります。平安時代初期に成立したとされる『竹取物語』にも、蒔絵に関する記述が見られるそうです。

「蒔絵」の漢字の由来は?

「蒔絵」の「蒔」という漢字には、「植える」「立てる」という意味のほかに、「穀物の種をまく」という意味が含まれます。そのため、色粉をまいて仕上げる蒔絵にも、「蒔」という漢字が使われたのではないでしょうか?

蒔絵の歴史

日本の伝統工芸である蒔絵。先述の通り、蒔絵は奈良時代から見られる技法です。現存最古の遺品は、正倉院にある末金鏤大刀(まつきんるのたち)で、続く平安時代の蒔絵に大きな影響を与えたとされます。平安時代後期になると、貴族の調度や邸宅などにも蒔絵が施されるようになりました。

鎌倉時代には、国宝に指定されている鶴岡八幡宮の籬菊螺鈿蒔絵硯箱(まがきにきくらでんまきえすずりばこ)に見られるように、全面に地蒔する沃懸地(いかけじ)が人気だったそうです。また、この頃から立体感のある高蒔絵の技法が生まれ、室町時代にさらに発展しました。

蒔絵の技術が最高潮に達したのは、江戸時代であると考えられています。数多くの職人によって、伝統技法と斬新な発想が合わさった画期的なデザインが次々と考案されたのです。中でも、国宝に指定されている本阿弥光悦(ほんあみ・こうえつ)の舟橋蒔絵硯箱や、尾形光琳(おがた・こうりん)の八橋蒔絵螺鈿硯箱などは、その代表例です。

階級を問わず、多くの人々から愛された蒔絵の工芸品。しかし、近現代に入ると、生活様式が変化したこともあり、工芸品の需要は減っていきました。それに伴って職人の数も減少していきましたが、1889年(明治22年)に開校した東京美術学校(現在の東京藝術大学の前身)に漆工科が設置され、伝統技術として保護されるようになったのです。

***

いかがでしたか? 今回の「蒔絵」のご紹介は、皆さまの漢字知識を広げるのに少しはお役に立てたでしょうか? 目を引くほど美しい蒔絵の工芸品。国宝に指定されている本阿弥光悦や尾形光琳の作品は、東京国立博物館に保管されているため、企画展が開催された際には、ぜひ足を運んでみてください。

文/とよだまほ(京都メディアライン)
HP:https://kyotomedialine.com FB

 

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