正しい意味を理解し、適切に漢字が使えているのか、疑問を感じることが増えていませんか? 適当に漢字を使ってしまい、気付かないところで「恥をかいている」ということがあるかもしれませんね。
Google 先生やデジタルデバイスの出現により、便利になった反面、情報の中身については十分な吟味が必要な時代になっております。あなたの“漢字の知識”は確かでしょうか? もう⼀度、確認しておいても良いかもしれません。
「脳トレ漢字」第188回は、「憚る」をご紹介します。複数の意味を持つ「憚る」。漢字になると一気に難しくなりますね。実際に読み書きなどをしていただき、漢字への造詣を深めてみてください。
「憚る」とは何とよむ?
「憚る」の読み方をご存知でしょうか? 「たんる」ではなく……
正解は……
「はばかる」です。
『小学館デジタル大辞泉』では、「対象を敬遠する気持ちがあって距離を置く。差し障りがあってうまくいかなくなる。」と説明されています。遠慮がちになるという意味として使われることが多い、「憚る」。ほかにも、「いっぱいになること」や「幅をきかせる」という意味が含まれます。
「幅をきかせる」という意味に関しては、「憚る」の「はば」を「幅」として認識するようになったことが由来であるとされます。
「憚る」の漢字の由来は?
「畏憚(いたん)」や「忌憚(きたん)」などの言葉にも使われている通り、「憚」という漢字には「恐れる」「悩む」「脅かす」という意味が含まれています。また、『日本書紀』や『万葉集』では、「波々箇屡」「波婆可流」などの当て字で、「はばかる」という言葉が記されています。
「憚る」に関係することわざ
遠慮する・敬遠するという意味として使われる「憚る」。この言葉が使われていることわざとして、「憎まれっ子世に憚る」が知られています。「憎まれっ子世に憚る」とは、「人から憎まれるような子は、世間に出ると幅をきかし、威勢をふるう」という意味です。ここでの「憚る」は、「幅をきかせる」という意味であるのが分かります。
「憎まれるような人ほど世渡り上手」という意味として使われることが多いですが、本来は「世間から嫌がられるものは決してなくならない」という意味で使われていたそうです。また、古くは「世に憚る」の部分が「世に出(いづ)る」になっていたとされ、「憎まれっ子」を「にくまれご」と発音していたと考えられています。
現在でも、よく耳にする「憎まれっ子世に憚る」。中国には、「好人早過世、歹人磨世界(善人ほど早死にし、悪人ほど長生きして活躍する)」ということわざがあり、英語圏でも「Ill weeds grow apace(雑草はすぐ伸びる)」という表現が使われています。
憎らしい人ほど大成する・嫌なものほど世にはびこるという認識は、万国共通なのかもしれませんね。
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いかがでしたか? 今回の「憚る」のご紹介は、皆さまの漢字知識を広げるのに少しはお役に立てたでしょうか? ことわざとして使われることも多い「憚る」。日本で使われているものと同じようなことわざが、他国にも存在することが分かりました。
意味が似ているものや、その国独自のことわざなど、数多くの表現が見られるため、ぜひ調べてみてください。
文/とよだまほ(京都メディアライン)
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