歌舞伎の大名跡である市川團十郎白猿の襲名披露興行を撮影した、見開き1mとなる大迫力の超特大写真集『十三代目 市川團十郎白猿』が発売されました。本書は「SUMO本」と銘打った巨大アート写真集シリーズの第5弾。一体どんな写真集なのか詳細をレポートします。

超特大写真集シリーズ「SUMO本」とは?

本を読むというよりは、舞台を鑑賞している感覚。アップにした写真は、自分よりも大きく写っているので、まるで目の前の人物と対峙しているよう。

美術書の分野で世界に目を向けると、じつは豪華本や大型本といわれる分野がトレンドとなっています。たとえば、ドイツの出版社であるTASCHENが巨大な画集や写真集を刊行しており、2018年に国内価格にして360万円+税にもなる『Ferrari』を発売したことで話題となりました。出版市場が縮小し、各社が色々な試行錯誤を続けるなか、この巨大アート本に小学館が目をつけます。

2023年11月22日発売『十三代目 市川團十郎白猿』。装丁は無印良品のアートディレクターも務める世界的デザイナー・原研哉さんが手がけている。

2020年に「SUMO本」と呼ばれる超特大写真集シリーズが立ち上がりました。判型はB2版。見開きで横1mにもなる大きな紙面は、書籍の概念を覆すほどの迫力とインパクトがあり、目の前にするとまるで自分が中に入り込むような錯覚に陥ります。

「SUMO本」第1弾『東大寺』、第2弾『土門拳』、第3弾『入江泰吉』、第4弾『法隆寺』

「SUMO本」シリーズは、これまで約3年をかけて、『東大寺』『土門拳』『入江泰吉』『法隆寺』と主に仏教美術の領域で刊行が続きましたが、今回第5弾として発表されたのが、同シリーズでは初めて歌舞伎をテーマにした『十三代目 市川團十郎白猿』。今までの仏像、建築、風景といった被写体から、動きのある人物に変わるということでも新たな挑戦です。

この大きい判型であることの良さは、なんといってもその圧倒的な臨場感です。ページを開いてみると、本……というより何かひとつの美術作品を鑑賞しているような、そんな特別感のある読書体験が楽しめます。

サライと比較するとその大きさがよくわかる。

第4弾までの購入者からは「お寺で実際に肉眼で見るよりもよく鑑賞できた」「精巧さ、質感だけでなくその仏像を制作した人のエネルギーまで感じた」等々の声であったり、研究者からも「学術的な資料としても大変貴重で、現地調査だけでなくこの写真からわかることもある」という評価が届いています。さて、今回発売された『十三代目 市川團十郎白猿』はどんな人に求められるのでしょうか?

大型写真集『十三代目 市川團十郎白猿』
気になる中身を一部公開

上製布装に「十三代目 市川團十郎白猿」の文字が箔押しされた本書に加え、成田屋の歴史・歴代の團十郎・歌舞伎十八番演目紹介・掲載された写真の説明をまとめた解説本を、團十郎の舞台衣装を象徴するような鮮やかな赤い専用ケースに入れた商品。本というよりは、もはや家電のような大型プロダクトを思わせる全容。

それでは、『十三代目 市川團十郎白猿』の中身を見ていきましょう。

本書は、十三代目 市川團十郎白猿が2022年10~12月にかけて歌舞伎座で行った襲名披露興行に密着取材することにより製作された写真集です。江戸時代以来、現代まで300年以上続く大名跡「市川團十郎白猿」の第13代が誕生する瞬間を撮影し、まさに歌舞伎界の歴史が動いた瞬間に立ち会ったドキュメンタリー色の強い写真集でもあります。

貴重な襲名披露にふさわしく、撮影陣も豪華。40年以上歌舞伎を撮り続けている篠山紀信さん、雑誌・広告・CDジャケット等々で国内外のアーティストを数多く手がけている三浦憲治さん、CMやファッション分野でも活躍し舞台撮影も多い宮澤正明さん、という日本を代表する写真家3名での総力体制で臨み、名場面をひとつも逃すまいとする製作スタッフの意気込みが感じられます。

掲載されている写真ですが、襲名披露公演の各演目で新・團十郎が躍動するシーンをはじめ、ファンが見たい! と思うようなシーンがもれなく収録されていました。

撮撮影/三浦憲治

成田屋の伝統である『口上』での「にらみ」(見得を切るポーズ)や、歌舞伎十八番『勧進帳』で弁慶に扮する團十郎が決める「石投げの見得」をはじめ、ページをめくるたびに歌舞伎の舞台ならではの醍醐味が味わえるような紙面となっています。

海老蔵時代からずっと撮影してきた篠山紀信さんも、撮影を振り返って「この日の襲名興行の舞台は本当に素晴らしかった。十三代目を襲名する気概を感じた」と仰っていたそうです。実際、各ページから新・團十郎の気迫のこもったエネルギーが放射されているようでした。

撮影/篠山紀信

また、通常の舞台公演ではあまり見ることのできないレアシーンも満載。たとえば、出演者と関係者が全員揃って手締めを行う儀式『顔寄せ手打式』や、幹部俳優が一同に顔を揃えた『口上』、そして舞台裏のメイキングシーンなどは非常に目をひきました。海老蔵時代の秘蔵写真が掲載されているのも、歌舞伎ファンには見逃せないポイントかもしれません。

撮影/篠山紀信

長男・勸玄くん、長女・麗禾ちゃんの舞台シーンもしっかり収録されています。勸玄くんは正式に八代目市川新之助を襲名し、父と同様に襲名後初の舞台に挑み、麗禾ちゃん(四代目市川ぼたん)は難易度の高い舞踊を演じていて、成長著しいふたりの姿を確認できました。

撮影/三浦憲治、宮澤正明

「動き」のある紙面を支える最新デジタル印刷技術

『十三代目 市川團十郎白猿』を何度かじっくり精読してみて、本書では過去の「SUMO本」シリーズにはない、“動き”のある画面づくりが非常に印象に残りました。

先述したように、過去に発売された4冊は建物や仏像が主役でしたが、今回の被写体は市川團十郎白猿という人物です。舞台空間を使って新・團十郎が躍動するシーンから、暗闇に浮かび上がる場面まで、「静」と「動」のメリハリのある構成となっています。

撮影/宮澤正明

また、印刷のレベルの高さにも驚きました。各登場人物がまとう豪華絢爛な舞台衣装や團十郎の顔を彩る鮮やかな隈取など、「赤」や「金」の発色が非常に美しく、立体感のある紙面が目に飛び込んできます。最先端の印刷技術「UVインクジェット印刷」による高精細印刷の威力が体感できました。

撮影/宮澤正明
撮影/三浦憲治

B2サイズの本書のほかに日英バイリンガルの解説書もついてくるのですが、こちらのクオリティにも注目。

市川團十郎家(成田屋)の発展の歴史、歴代團十郎のプロフィール、成田屋を代表する演目「歌舞伎十八番」などが、浮世絵や歴史資料、写真など、豊富なビジュアル付きでわかりやすく説明されているほか、写真集に収録された各写真の解説も読むことができます。

A4変形サイズの解説集も付いていて、成田屋の基礎知識をはじめ、歴代の團十郎、演目、今回掲載された写真についての場面がわかる。

聞けば、この企画自体は立ち上がったのは2019年頃から。「新・團十郎の襲名披露を最新デジタルカメラで撮影した写真集を作ろう」とプロジェクトがあたためられていたそうです。数年越しでの肝いりの企画でしたが、一度はコロナの影響で襲名披露興行が延期され、写真集の制作も先が見通せない状況となったこともあったそうです。

担当する編集者からは「迫真の表情や額に流れる汗を間近に見ていると、成田屋という大名跡を継いだ新・團十郎の責任感や強い意志を感じ取ることができます。ぜひ、隅々まで楽しんでいただければと思います」とコメントをいただきました。

本作ですが、お値段はなんと363,000円(税込)。これまで発売された「SUMO本」4冊の書籍とほぼ同価格です。ひとつの芸術作品のようなクオリティですからそれなりの高価格帯ですが、さらに今回の『十三代目 市川團十郎白猿』はなんと限定4冊で1,000,000円を超える超高価な特装版が用意されているというのです。

この「特装版」がどんなものなのか、編集担当者に伺った話を元に、ご紹介したいと思います。

100万円超え写真集『十三代目 市川團十郎白猿』特別額装セットのプレミアな中身に続きます。

書籍情報

『十三代目 市川團十郎白猿』
2023年11月22日発売
定価363,000円(税込)
B2判(天地69cm×左右50cm)
上製布製箔押し、美麗ケース付、172ページ[写真解説本付]
特設サイトはこちらから
https://www.shogakukan.co.jp/pr/sumo/

文/齋藤久嗣

 

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