ヨーロッパの美術史の中で、静物画が絵画の分野として確立するのは17世紀のこと。市民階級が台頭し、経済的に発達したネーデルランドやフランドル(現在のオランダ、ベルギー)で盛んに描かれ、身の回りの品々はもちろんのこと、富の豊かさを示す山海の珍味や珍しい工芸品、高価な敷物などが描かれました。そのなかで最も好まれた主題が「花」でした。

フィンセント・ファン・ゴッホ
《赤と白の花をいけた花瓶》
1886年 油彩/キャンヴァス 
ボイマンス・ファン・ブーニンヘン美術館、 ロッテルダム
Collection Museum Boijmans Van Beuningen,
Rotterdam

SOMPO美術館の「ゴッホと静物画-伝統から革新へ」展は、ゴッホを軸として静物画の発展を辿る展覧会です。(10月17日~2024年1月21日)

本展の見どころを、SOMPO美術館の上席学芸員、小林晶子さんにうかがいました。

「ポスト印象派を代表する画家、フィンセント・ファン・ゴッホの代表作と言えば、どんな作品を思い浮かべますか? オランダの農民生活を描いた《ジャガイモを食べる人々》、あるいは夜空の描写が特徴的な《星月夜》でしょうか? 「ゴッホと静物画‐伝統から革新へ」は、ゴッホの代表作と言われる《ひまわり》と《アイリス》を同時に鑑賞できる展覧会です。

フィンセント・ファン・ゴッホ 《ひまわり》
1888年 油彩/キャンヴァス SOMPO美術館
フィンセント・ファン・ゴッホ 《アイリス》
 1890年 油彩/キャンヴァス
ファン・ゴッホ美術館、アムステルダム(フィンセント・ファン・ゴッホ財団)
Van Gogh Museum, Amsterdam(Vincent van Gogh Foundation)

《ひまわり》も《アイリス》も、「静物画」(=花、食器、食物など、動かないものを主題とする絵画)と呼ばれる分野に属します。ゴッホは《ジャガイモを食べる人々》のような人物を描く画家を目指していたため、静物画は絵の技法を学ぶための手段と考えていました。しかし静物画を描く過程で、重厚な色彩は鮮やかに変化し、様々な筆遣いを用いたゴッホならではのスタイルを手に入れることになります。まさに静物画を描くことで、ゴッホはゴッホになったということができます。

フィンセント・ファン・ゴッホ 《麦わら帽のある静物》
1881年 油彩/キャンヴァスで裏打ちした紙
クレラー=ミュラー美術館、オッテルロー
(C)2023 Collection Kröller-Müller Museum, Otterlo, the Netherlands

この展覧会では、17世紀から20世紀初頭の静物画と共にゴッホの作品を紹介し、この画家が先人から何を学び、そして次世代の画家に何を伝えたかを探ります。ドラクロワ、ルノワール、セザンヌ、シャガールらが描いた静物画と共に、ゴッホの作品をご鑑賞いただきます」

ポール・セザンヌ《りんごとナプキン》
1879-80年 SOMPO美術館

ゴッホをゴッホたらしめた静物画の真髄に触れることのできる展覧会です。会場でじっくりご鑑賞ください。

【開催要項】
ゴッホと静物画―伝統から革新へ
会期:2023年10月17日(火)~2024年1月21日(日)
会場:SOMPO美術館
住所:東京都新宿区西新宿1-26-1 
電話:050・5541・8600(ハローダイヤル)
美術館公式サイト:https://www.sompo-museum.org/
展覧会公式サイト:https://gogh2023.exhn.jp/
開館時間:10時~18時、11月17日(金)と12月8日(金)は~20時(いずれも入館は閉館30分前まで)
休館日:月曜日(ただし1月8日は開館)、年末年始(12月28日~1月3日)
料金:公式サイト参照
アクセス:公式サイト参照
※日時指定予約制

取材・文/池田充枝

 

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