「戦国大河」の系譜

お葉(左/演・北香那)とおふう(右/演・清乃あさ姫)母子。(C)NHK

I:この年は、3月に武田家が滅亡しましたが、本能寺の変は6月。武田の領国には滝川一益や河尻秀隆らが派遣されていましたが、わずか数か月で信長が横死したわけですから、それはもうてんやわんやだったと思います。

A:いわゆる天正壬午の乱の時期だと思うのです。劇中では家康が北条と合戦に及び、それを秀吉が静観する様子が描かれました。このくだりをもう少ししっかり描いてくれたら面白いだろうにと思った方も多いのでは。「戦国大河」のくくりでいうと『独眼竜政宗』『武田信玄』『毛利元就』の系譜だと天正壬午の乱を重厚に描いたのかもしれません。ただ本作は、どちらかといえば『おんな太閤記』『利家とまつ』『功名が辻』『江 姫たちの戦国』の系譜に連なるようですから、尺はとらないだろうと予想していた人も多いでしょう。

I:それでも、さらっとですが背景には触れてくれたような気がします。さて、側室オーデションで選ばれたお葉(演・北香那)の生んだおふう(演・清乃あさ姫)が北条氏直(演・西山潤)に嫁ぐということが描かれました。政略結婚ではありますが、北条なら申し分はないのではないでしょうか。

A:早雲伊勢宗瑞を祖と仰ぐ小田原北条氏。本来であれば単独で大河ドラマのメインを張ってもいいくらいの存在です。この頃は三国軍事同盟を結んでいた今川、武田が滅亡し、今や関東に敵なしと油断したのでしょうか。それとも徳川や秀吉を見くびっていたのでしょうか。『独眼竜政宗』『武田信玄』の系譜に連なる形で、一度じっくり大河ドラマでやってほしいテーマではあります。

今後のキーパーソンは茶々?

I:さて、お市の方の〈一度ならず二度までも夫だけ死なせて生き恥をさらすことこそ、地獄にいる兄に笑われようぞ〉の台詞が印象に残りました。お市の中では信長は地獄に堕ちた設定なのですね。

A:まあ、でも信長が極楽浄土にいったというのもなんか違う気もしますし、さりながら、地獄に堕ちねばならぬほどひどいことをしていたかと思えばそれもまた違う気もしますし、難しいですね。

I:そんなこんなで長女の茶々が〈母上の無念は茶々が晴らします〉と宣言しました。

A:今後の物語がどのように展開するのか興味深いですね。本作は家康が主人公ということで「秀吉下げ」が顕著ですが、どういう流れにしてくるのでしょう。

I:しかし、お市の方の戦装束がかっこよかったですね。本作ではお田鶴など(演・関水渚)女性陣の甲冑姿が描かれましたが、お市の方の戦装束は信長を彷彿させるデザインでした。もっと派手に殺陣を繰り広げられたらとも思いましたし、あの甲冑姿で馬を駆ってほしかったなぁ……。次回大河出演の際にはそういう役どころで登場してほしいです。そのお市の方ですが、家康が援軍に駆けつけてくるのを待っていたという感じでしたが、家康は現れませんでした。

A:まあ、援軍に現れたら現れたで、ありえない設定ですから大変なことになりますからね。だったら最初からそういう挿話を入れなければいいのでは? と思う方もいるかと思います。

I:秀吉に会った時の、茶々の意味深な笑みが気になりましたね。

A:そして、お市の方の死を聞いた家康は、秀吉への憎悪を膨らませているかのようなラストシーンになりました。

I:お市の方の娘の茶々が今後のキーマンになるのでしょうか。そんな終わり方でしたね。

凛々しいお市の方。(C)NHK

●編集者A:月刊『サライ』元編集者(現・書籍編集)。歴史作家・安部龍太郎氏の『日本はこうしてつくられた3 徳川家康 戦国争乱と王道政治』などを担当。『信長全史』を編集した際に、採算を無視して信長、秀吉、家康を中心に戦国関連の史跡をまとめて取材した。

●ライターI:三河生まれの文科系ライター。月刊『サライ』等で執筆。『サライ』2023年2月号 徳川家康特集の取材・執筆も担当。好きな戦国史跡は「一乗谷朝倉氏遺跡」。猫が好き。

構成/『サライ』歴史班 一乗谷かおり

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