無事、伊賀を越えた家康(演・松本潤)。(C)NHK

ライターI(以下I):今週は家康三大艱難(かんなん)のひとつ「伊賀越え」が描かれました。本能寺の変で信長が斃れた直後の「家康避難行」ですね。

編集者A(以下A):三大艱難とは、「三河一向一揆」「三方ヶ原の戦い」とこの「伊賀越え」をいいます。『どうする家康』では、三河一向一揆で本多正信(演・松山ケンイチ)らが一揆側についた場面が描かれ、三方ヶ原合戦では、夏目広次(演・甲本雅裕)が家康の身代わりになって討ち死にする様子が描かれました。

I:そして、伊賀越えということになるわけですが、視聴者の方々はどのように受け止められたでしょうか。

A:エンターテインメントとしては抜群に面白い回になったと思います。多羅尾光俊を演じたきたろうさん、百地丹波を演じた嶋田久作さんなど、渋くて重厚で、ともすればコミカルタッチに流れた場面にピリッとしたスパイスを添えてくれました 。

I:私は煙玉ですかね、スモークの中での斬り合いシーンが、まさに忍者活劇風で凄く面白かったです。

A:加えて、大鼠(演・松本まりか)の存在がよかったですね。いわゆる「くの一」というと『影の軍団』の志穂美悦子さん、『風神の門』の小野みゆきさん、『真田太平記』の遥くららさんなどが思い浮かびます……『真田太平記』の「~しまいた」というせりふ回しが懐かしいです。

I:(引き取って)凄く古いくの一ですね。松本まりかさんを絶賛するのではないのですか?

A:もちろんそうです。服部半蔵(演・山田孝之)をそでにするのも様になっていますし、もっと登場してほしいキャラクターなんですけどね。そういえば、松本まりかさん、6月4日に東京ドームで始球式をやっていました。たまたま球場にいましたが、「お、大鼠だ」と思いました(笑)。半蔵&大鼠でスピンオフをやってほしいですね。

服部党の大鼠(演・松本まりか)と半蔵(演・山田孝之)。(C)NHK

首を斬られそうになった家康を見て思うこと

首を斬られそうになる家康と、救った本多正信(左/演・松山ケンイチ)。(C)NHK

I:家康の伊賀越えが成功したのは、軍師としてもぐりこんでいた本多正信のおかげという感じでまとめられていましたね。

A:三河一向一揆で家康に反旗を翻して出奔していた正信がいつ帰参していたかということについては、諸説あるようです。本能寺の変前には帰参していたという説が濃厚なのですが、まあここは許容範囲でしょう。武蔵坊弁慶と源義経の『勧進帳』を髣髴とさせるやり取りを2012年の大河ドラマ『平清盛』で主演を張った松山ケンイチさんが、結袈裟(ゆいげさ)をつけた山伏っぽい姿で展開してくれたというのが、大河ファンとしてはツボでしたね。

I:左衛門尉(演・大森南朋)らが囮(おとり)になるはずが、家康が囮になってしまったというハチャメチャな展開でしたが、楽しめましたね 。

I:さて、この伊賀越えについて実際はどうだったの? という方々に、伊賀が地元の三重大学の藤田達生教授の『戦国秘史秘伝』を紹介したいと思います。「伊賀越え、実は甲賀越えだったのでは?」という新説が収録されています。劇中でも多羅尾光俊が「実は親切だった」という展開でしたからね。ところで、私は家康の首が斬られそうになった場面が印象に残りました。家康がこのとき害されていたならばその後の日本はどうなっただろうと。

A:お、まじめな意見ですね。本作のあの場面で「松潤家康」を「史実なんてどうでもいいから斬ってしまえ!」と思った視聴者はあまりいなかったと思いますが 、1981年にTBSで放送された開局30年記念の『関ケ原』を見たときは、老獪で策士然とした家康(演・森繁久彌)と本多正信(演・三國連太郎)が憎らしくて、国広富之さんが演じた小早川秀秋に対して、史実を度外視して家康を攻めろ! と思いながら見ていました。1985年の『真田太平記』のときも、真田の忍びが家康に肉迫した場面で、史実はどうでもいいから家康が討たれたというストーリーでいいじゃないかと思ったこともあります(笑)。

I:そうですか。でも実際に家康が討たれるストーリーにしたらめちゃくちゃなドラマになりますよ。

A:確かにそうですが、少年の頃はそんなストーリーを見たいと思ったのですよ。今でも小早川秀秋が家康を攻め込んで東軍敗退・家康討ち死にというストーリーを大真面目で制作してもらえないかと思うことがありますよ。

織田家の出世頭 光秀と秀吉はどう描かれたのか? 次ページに続きます

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