高品質の音響設備でレコードが刻む豊かな音楽を堪能する贅沢な時間……。日本独特の文化を心ゆくまで体験できる、大阪の名店を紹介する。

レコードとライブで心躍る大阪のジャズ発信地

地下鉄谷町九丁目駅の6番出口から地上に上がる踊り場に突然、『ジャズ喫茶 SUB』が現れる。昭和45年(1970)、ベーシストで音楽興行主であった西山満さんが創業し、10年前からはテナーサックス奏者の長谷川朗さん(49歳)が店を経営。長谷川さんは名古屋で活動中に西山さんの逝去を受け、帰阪。恩師が作り上げたジャズの拠点を引き継いだ。

自家製のキーマカレー、サブのカレー950円。レシピは、長谷川さんの妻でアルトサックス奏者の側島万友美さんによる。

店では1970年代から蒐集したレコードを聴かせるとともに、ジャズのライブにも力を入れ、連日、耳の肥えた客に熱気溢れるセッションを届けている。

週に数回開催されるジャズライブ。トランペット黄啓傑さん、サックス長谷川朗さん、ベース坂井美保さん、ドラムス森下啓さん。
プレーヤーはデノンのDP59L。昭和50年代最後のプレーヤーで、当時の技術をすべて投入し開発されたという。低音を力強く再現。

「店は大きすぎず、小さすぎない、ちょうどよい“箱”なんです。床も木製で音が響きます。ジャズはライブで聴くのが一番ですが、次は、演奏者の背景が見えるようなアナログレコード。若い方にふらりと来店してもらいたいですね」と話す長谷川さん。思い出の一枚として、モダンジャズの代表的ドラマー、アート・ブレイキーを挙げた。大阪に戻ってきたときに強烈に印象に残ったレコードという。

アート・ブレイキー&ザ・ジャズ・メッセンジャーズの『FREE FOR ALL』。1964年録音、ブルーノートレーベル。

いよいよライブの開始。長谷川さんのテナーサックスが唸り、トランペット、ベース、ドラムスが呼応する。心躍るひとときだ。

ジャズ喫茶 SUB

大阪市中央区上汐2-4-6 上六センタービル地下1階
営業時間:15時〜23時
不定休
交通:地下鉄千日前線谷町九丁目駅から徒歩すぐ
16席
https://www.subjazzcafe.com

取材・文/関屋淳子 撮影/奥田高文
※この記事は『サライ』2023年6月号より転載しました。

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