A:さて、それはどうでしょうか。ところでもうひとつ気になったのが、歩き巫女の千代(演・古川琴音)が夏目広次に〈吉良さまが家老としてお迎えするようですよ〉と調略しているかのような場面がありました。その後の流れを見ると、あたかも夏目広次が調略に応じたかのようにも受け取れました。

I:三河武士がそんな調略に乗るわけがありません! ここはAさんのいう通り、「信仰心の強さ」を強調して欲しかったですね。でも、この千代って怪しいですよね? もしかして間者? と思ってしまいます。ネット上では彼女は望月千代女だ! ということで盛り上がっていますが、どうなのでしょう?

A:それは、追々明らかになるのではないでしょうか。仮にそうだとしたら、面白い展開になるのですが……。

歩き巫女の千代(演・古川琴音)にそそのかされる(?)夏目広次(演・甲本雅裕)。(C)NHK

今週の松潤家康

忠臣として名を残した土屋長吉(演・田村健太郎)。(C)NHK

I:さて、一向宗側につく家臣も現れて家康は窮地に陥ります。援軍を求められた家康は〈わしが出る〉と自ら出陣する決意を表します。この場面の「松潤家康」の表情がやっぱり前半に比べると、キリリと締まってきた印象です。

A:人生最大の危機ですからね。だんだん大人の顔つきになってきました。やっぱり使い分けてたんだぁ、という場面でした。今後も家康の苦難が続きますからどのように「松潤家康」の表情が変化していくか楽しみですね。さて、家康は〈寺の側についた家臣たちもわしが出ていけば、心を変えるかもしれぬ〉と言いました。「水戸黄門的」な感覚では、家康が出ていけば皆、「はは~」とひれ伏すのでしょうが、時はまだ戦国。しかも相手は信仰心で結束する一向宗。歌い踊りながら結束していますから、家康が出て行ってもダメでしょう。

I:家康は金陀美具足を着用して本證寺に攻め入ります。土屋長吉(演・田村健太郎)が案内する設定でした。

A:このくだりは『徳川実紀』などに記された土屋長吉重治の忠臣エピソードをアレンジしている感じでした。「長吉は一向宗徒で、当初は一揆側に与したものの家康の盾になって討ち死にした」ということです。

I:家康の出世物語は、家臣団の犠牲の上に成り立っていた側面もあるということですね。さて、物語では、なんと一向宗サイドに軍師がいることが明らかになりました。そして、一向一揆の帰趨は次週に持ち越しです。これで3週続けて一向一揆ということになりますね。

A:作者や制作陣は、この三河一向一揆が家康の人生のターニングポイントと認識しているのではないでしょうか。

I:なるほど。そういえば瀬名が政に口を出し、それに対して家康が難色を示した場面が気になっていました。〈先にお約束をお破りになったのは殿では?〉という瀬名の発言に対して〈うるさい! この国の主はわしじゃ〉と声を荒げました。

I:前週は「口吸い」をせがむなど仲睦まじい様子でしたが、その裏ではふたりの関係に暗雲が垂れこめていたということなのでしょうか。

A:いったいどんな流れになるのでしょうか。政に口を出す瀬名が鬱陶しくなっていくのでしょうか。瀬名の行く末がどう描かれるのか、「どうなる瀬名」が気になってしょうがありません。

I:そして一向宗側の軍師が本多正信(演・松山ケンイチ)ということが明らかになりました。歴史好きだったり、予習をして視聴されている方には、「そういうことか」という流れかと思いますが、今週も服部半蔵(演・山田孝之)の登場もあり、スリリングな展開になりました。

A:吉良義昭(演・矢島健一)や松平昌久(演・角田晃広)など三河国内の「反家康分子」もこの機に乗じて決起しました。

I:「敵の敵は味方」ってことですよね。結果的に「家康包囲網」に囲まれるということになりました。この一向一揆をどうやって収束させるのか? なんだかワクワクしますね。

一向宗側の軍師の正体は本多正信(演・松山ケンイチ)だった。(C)NHK

●編集者A:月刊『サライ』元編集者(現・書籍編集)。歴史作家・安部龍太郎氏の『日本はこうしてつくられた3 徳川家康 戦国争乱と王道政治』などを担当。『信長全史』を編集した際に、採算を無視して信長、秀吉、家康を中心に戦国関連の史跡をまとめて取材した。

●ライターI:三河生まれの文科系ライター。月刊『サライ』等で執筆。『サライ』2023年2月号 徳川家康特集の取材・執筆も担当。好きな戦国史跡は「一乗谷朝倉氏遺跡」。猫が好き。

構成/『サライ』歴史班 一乗谷かおり

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