今日も続けられている薬師寺の修二会「花会式」。

ライターI(以下I):2026年の大河ドラマ『豊臣兄弟!』の放送が始まりました。

編集者A(以下A):第1回放送後の「紀行」で奈良県大和郡山市にある郡山城が紹介されました。ここは、豊臣秀長の居城で、秀長は1591年(天正19)1月22日にこの城で亡くなっています。郡山城には幾度も訪れていますが、直近では昨年の10月に訪れています。実はその日に薬師寺で打ち合わせがあったので、早めに出て郡山城を訪れようと思ったのです。薬師寺最寄り駅の近鉄西ノ京駅から近鉄郡山駅は一駅先ですから。

I:郡山城のある大和郡山市は、東大寺や興福寺、薬師寺、唐招提寺など奈良の世界遺産寺院とそれほど距離が離れていませんね。

A:郡山城に到着すると、ちょうど「語り部」の方々の活動日だったようで、いろいろと説明いただきました。郡山城の石垣のなかに平城宮羅城門の礎石などで使われていた石材が用いられているということ、天守台から東大寺の大仏殿、薬師寺の東塔が望めること、さらには、さらにその反対側には、山にさえぎられて建物は見えませんが、法隆寺があることまで説明してくれました。それまで二度も訪れていたのですが、初めて聞く情報もありました。

I:郡山城が大和の要衝にあることがわかりますね。

A:平城京が平安京への遷都したのは794年です。800年ほど経過して石垣に再利用されたということに驚かされました。さらに、以前はその存在に気がつかなかった天守台がきれいに整備されていたのも驚きでした。

I:なるほど。

A:郡山城を訪れた後に薬師寺を訪れたのですが、郡山城を訪れたことを話題にして、「薬師寺にも秀長に関連する史料は残っていないでしょうか」と質問してみたのです。すると、薬師寺「宝物管理研究所」の方が興味深いお話しをしてくれました。その内容は、寺報『薬師寺』214号(令和4年)、215号(令和5年)の「宝物管理研究所だより」にその方の論考が掲載されていますので、その論考をもとに説明したいと思います。

I:はい。

A:秀長が亡くなる2年前の1589年(天正17)から大和の社寺では豊臣秀長の病気平癒祈願が行なわれたといいます。薬師寺では、同年の年末に金堂で「大般若経」六百巻を読む法会、「薬師経」千二百巻の読経を行なったそうです。さらに、翌年の1590年4月にも前回同様に秀長の家臣からの依頼で「大般若経」を七夜にわたって真読したといいます。前述の通り、秀長は、1591年(天正19)に郡山城で亡くなったのですが、1年以上前から病床に伏すことがあったようです。

I:戦国時代の大和の社寺の動静が知られる史料ですね。

A:平癒祈願のおかげもあってか、いったん秀長の病状は持ち直したそうです。しかし、1590年の9月に再び病状が悪化して、秀吉がわざわざ郡山城に見舞いに訪れるなど、兄弟仲の深さを印象付けるエピソードも残されています。このときも薬師寺では病気平癒祈願の法会を行ない、さらに、2月の修二会(しゅにえ)で行なわれる造花法会を臨時で行なうことになったそうです。

I:造花法会とは、花会式(はなえしき)のことですね。ここは、薬師寺のホームページから引用します。

修二会とは奈良の大寺が国家の繁栄と五穀豊穣、万民豊楽などを祈る春の行事です。修二会とある通り、この法要は2月に行われるのですが、薬師寺の場合は旧暦の2月末に行われていた事から、そのまま新暦に直して3月25日から3月31日にかけて行われています。東大寺の修二会に「お水取り」という俗称がついたように薬師寺修二会には十種の造花がご本尊に供えられるところから「花会式」と呼ばれ、「奈良に春を告げる行事」として親しまれています

A:奈良時代から行なわれている行事が、豊臣秀長の病気平癒祈願の際に行なわれ、同じ行事が令和の今も大切に行なわれているというのは、古都奈良ならではのことですね。

I:私は花会式の際にお参りしたことがあるのですが、仏前に供えられる造花の美しさには心奪われます。

A:前述の論稿では、秀長の病気平癒祈願の造花法会は10日間昼夜眠らずに作業して10瓶の造花が揃えられたそうです。そして、その造花を本尊に配して法会が行なわれたそうです。興味深いのは法会後の造花のうち2瓶ずつを秀長と秀吉のもとに届けたそうです。

I:ということは、病床の秀長も薬師寺から届けられた造花をみたんでしょうね。

A:花会式は現在も桜、梅、桃、山吹、椿、菊、牡丹、牡若、藤、百合などの造花を飾り付けて行なわれます。『豊臣兄弟!』でこのエピソードが登場するかどうかは定かではありません。でも、病気に伏した秀長のために大和の寺社が病気平癒祈願をし、薬師寺では今も花会式で目にすることのできる造花を秀長に献納していたということは、記憶に刻んでおいてほしいと思います。

I:今年も3月に花会式が行なわれます。奈良時代だけではなく戦国時代の豊臣秀長に思いを馳せてお参りするのもいいかもしれません。

郡山城天守台。

●編集者A:書籍編集者。かつて編集した『完本 信長全史』(「ビジュアル版逆説の日本史」)を編集した際に、信長関連の史跡を徹底取材。本業では、11月10日刊行の『後世に伝えたい歴史と文化 鶴岡八幡宮宮司の鎌倉案内』を担当。

●ライターI:文科系ライター。月刊『サライ』等で執筆。猫が好き。愛知県出身なので『豊臣兄弟!』を楽しみにしている。神職資格を持っている。

構成/『サライ』歴史班 一乗谷かおり

 

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