字画も少なく、しょっちゅう目にする簡単な漢字。読めそうなのに、いざ声に出して読もうとすると、正しく読めるかどうか心配になって、思わず声を細めてしまう漢字ってありませんか?
いったん思い込み認知をしてしまうと、なかなかイニシャライズ(初期化)が難しいですよね。簡単な漢字であっても、脳トレ漢字の動画を見ながら確認学習をしていただくことで、思い込み認知をイニシャライズできる機会になると思います。
「脳トレ漢字」第133回は、「店子」をご紹介します。店といっても、飲食店や本屋などの商品を売るための場所ではありません……。
また、この記事を通じて、読むこと・書くこと・漢字の意味を深く知り、漢字の能力を高く保つことにお役立てください。
「店子」はなんと読む?
「店子」という漢字、読み方に心当たりはありますか?「みせこ」や「てんし」ではなく……
正解は……
「たなこ」です。
『小学館デジタル大辞泉』では、「家を借りている人」と説明されています。家主である「大家」の対となる「借家人(しゃくやにん)」のことです。
古くから「棚(たな)」という語は「商品を売る場所」のことで、室町時代に入ると「店(たな)」の字が同じ意味で使われるようになりました。その後、江戸では、長屋などの一般の借家も「棚(店)」と呼ぶようになり、家屋を借りる人を「店子」といったのでした。
現在では「テナント」とも言われ、貸借契約のもとで家を借りる人のことです。
「店子」の漢字の由来とは?
「店子」を構成する漢字を一文字ずつ見ていきましょう。「店」は「貸し屋、借家」を、「子」は「こども」を意味しています。
「店」という字は「みせ」とも「たな」とも読み、どちらも「商品をならべて売る所」という意味です。上述したように、江戸時代に入り「借家・借屋」の意味が加わったとされます。「店(たな)」と読む熟語は他にも、商品の在庫を調査して数量を確かめる「店卸(たなおろし)」が挙げられるでしょう。
「店子と言えば子も同然」の意味とは?
「店子」を使ったことわざに「店子と言えば子も同然」があります。これは「借家人は、家主にとって実の子も同然の間柄である」という意味です。
江戸時代、家を借りるときは身元保証人が必要でしたが、適当な人がいない場合は、大家自身が保証人となることがありました。そのため借家人には一人前の公的権利・義務がなく、家主がその保証・責任を負っていたのでした。現代ではあまり考えられませんが、当時はまさに親子のような関係を持っていたのです。「店子」の「子」の字はまさに、こうした背景を表しています。
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いかがでしたか? 今回の「店子」のご紹介は皆さまの漢字知識を広げるのに少しはお役に立てたでしょうか? 簡単な字だからこそ、文章の中で引っかからずについ読み飛ばしてしまうものです。改めて意味や由来を確認し、知識を定着させていきましょう。
来週もお楽しみに。
文/トヨダリコ(京都メディアライン)
アニメーション/貝阿彌俊彦(京都メディアライン)
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