歳をとるというのは厄介なものですよね。周りからは、年相応に物知りなどと思われたりして……。うっかり漢字の読み方なんか間違えたりしますと、とっても恥ずかしい思いをするなんてこともあるかもしれません。
脳の方は、若い時のようにパッパと記憶中枢からひっぱり出せなくなってきているかもしれませんが、「歳をとってきちゃって、なかなか思い出せなくて……」なんて言い訳をするようでは、サライ世代の沽券に関わる?
そんなことにならないように、動画を見ながら漢字の読み書きをすることで、脳のトレーニングとなります。
「脳トレ漢字」第132回は、「温石」をご紹介します。寒い季節に便利なあの道具の、元となったとされるものです。
この記事を通じて、読むこと・書くこと・漢字の意味を深く知り、漢字の能力を高く保つことにお役立てください。
「温石」はなんと読む?
「温石」という漢字、読み方に心当たりはありますか? 一般的な音読みを当てはめれば「おんせき」ですが……
正解は……
「おんじゃく」です。
『小学館デジタル大辞泉』では、「軽石などを焼いて布などに包み、懐に入れたりして体をあたためるもの」と説明されています。かつて日本で暖を取るために使われていた、火で焼いた蛇紋(じゃもん)石や軽石のことです。温石は、現在のカイロの原型とされています。石の代わりに菎蒻(こんにゃく)を煮て暖めたり、塩を固めて焼いたり、また、瓦(かわら)なども用いられました。
また、温石をぼろ布に包むことから「ぼろを着た人」をあざける意味も持ちます。
「温石」の漢字の由来とは?
「温石」を構成する漢字を見ていきましょう。「温石」は字のごとく「温かい石」のことを指します。初めの漢字が次の漢字を修飾する構成でできた熟語です。
「石」は「せき」ではなく「じゃく」と読みます。「温石」以外に「しゃく(じゃく)」という音読みをする熟語は「盤石(ばんじゃく)」「磁石(じしゃく)」などです。
「温石」から始まった「懐炉」
「温石」は、熱した石を懐中に入れて暖を取る道具でした。そして時を経て、現代の冬の必需品「懐炉(かいろ)」へと変化していきます。最後にその歴史をご紹介いたします。
江戸時代の元禄(1688~1704)初め頃に、保温力の強い灰を容器に密閉して燃焼させる「灰式懐炉」が発明されました。大正時代になると、気化した揮発油を白金の触媒作用で徐々に酸化発熱させる「白金懐炉」が使われました。
そして昭和53年(1978)、鉄粉と食塩水・活性炭などを袋中でまぜ合わせて発生させた酸化熱を利用する懐炉が発売。いわゆる「使い捨てカイロ」が登場しました。昨今では電子レンジで温めると再利用できるカイロ、充電式カイロなども出回っており、かつての「温石」とはかなり様相が異なったものに進化しています。
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いかがでしたか? 今回の「温石」のご紹介は皆さまの漢字知識を広げるのに少しはお役に立てたでしょうか? まだまだ寒い季節が続きます。ほんのり温かなカイロを使った際には、その歴史とともに「温石」のことも思い浮かべてみてはいかがでしょうか。
来週もお楽しみに。
文/トヨダリコ(京都メディアライン)
アニメーション/貝阿彌俊彦(京都メディアライン)
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