徳川四天王と徳川十六将をまずはおさえたい

I:久能山東照宮には、「徳川十六将図」が伝承されています。家康を支えた彼らとの関係がどう描かれるのかも、『どうする家康』の見どころのひとつですよね。

A:見どころのひとつ? 確かにそうなのですが、家康の偉業は彼らなしには成立しえなかった重要な存在です。まずは、酒井忠次、本多忠勝、榊原康政、井伊直政の徳川四天王の存在をがっちり押さえたいと思います。四天王の一の地位にある酒井忠次は大森南朋さんが演じています。徳川十六将の筆頭にも位置づけられている存在ですが、家臣団筆頭という地位にありながら、万座の前で「えびすくい」の踊りを披露するという気さくさを持ち合わせていたといいます。

I:扇の要にそういうキャラがいる組織は強いですね。この忠次の酒井家は、江戸時代には、庄内藩主として幕末を迎えるんですよね。

A:庄内藩といえば藤沢周平さんの小説でおなじみの海坂藩のモデルでもあります。もしかしたら『武士の一分』(原作『盲目剣谺返し』)の三村新之丞や『蝉しぐれ』の牧文四郎などの先祖が登場したりなんかして、と妄想するのも楽しみだったりします。

I:四天王といえば、本多忠勝。俗に平八郎と称されますが、今回は山田裕貴さんが演じています。平八郎といえば、鹿の角の兜で有名な武将ですよね。家康の主要な合戦のほとんどに出陣したにもかかわらず、傷を負った事すらないという豪の武者。家康とのやり取りが注目の武将です。

A:Iさんもすでに臨戦態勢ですね(笑)。このほか徳川四天王は、榊原康政(演・杉野遥亮)、井伊直政(演・板垣李光人)がいます。板垣李光人さんは『青天を衝け』の徳川昭武役が記憶に新しいですね。井伊直政は、桜田門外の変の井伊直弼の先祖になります。居城の彦根城はいまではゆるキャラの「ひこにゃん」が有名です。

I:四天王以外の十六将にも個性的な俳優陣がキャスティングされています。大久保忠世(演・小手伸也)、平岩親吉(演・岡部大)、鳥居元忠(演・音尾琢真)、渡辺守綱(演・木村昴)、服部半蔵正成には山田孝之さんなど、なかなか覚えるのは大変です(笑)。

A:いやいや、ここを事前に押さえておけば、いきなり20倍は楽しめると思いますよ。さらに、十六将の鳥居元忠の父・忠吉にイッセー尾形さんという豪華な布陣。この鳥居家の人々をしっかり脳裏に刻んでおけば、後年の感動場面がいっそう盛り上がると思います。

I:そういえば、松重豊さんが演じている石川数正が十六将には入っていないんですね。

A:そこ、けっこう重要なポイントです。家康人生のターニングポイントにもかかわることですから、第一話から松重さんの演技には要注目ですよ。なんだか、こういう話を始めるときりがないのですが、『鎌倉殿の13人』から『どうする家康』に続く流れについて、ちょうど1年前に「2年にわたる歴史叙事詩が始まる」という記事を書きました(https://serai.jp/hobby/1056634)。その二幕がいよいよ始まるわけです。

I:楽しみですね。私も久能山東照宮にお参りしないと!

※久能山東照宮博物館の展示内容については確認のうえ参拝ください。

●編集者A:月刊『サライ』元編集者(現・書籍編集)。歴史作家・安部龍太郎氏の『半島をゆく』、鎌倉歴史文化館学芸員の山本みなみ氏の『史伝 北条義時』などを担当。初めて通しで見た大河ドラマが『草燃える』(1979年)。先日、源頼朝のもう一人の弟で高知で討たれた源希義の墓所にお参りした。
●ライターI:ライター。月刊『サライ』等で執筆。『サライ』2022年1月号 鎌倉特集も執筆。好きな鎌倉武士は和田義盛。猫が好き。

構成/『サライ』歴史班 一乗谷かおり

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