柿澤勇人さんが熱演した第3代鎌倉幕府将軍源実朝。(C)NHK

ライターI(以下I):『鎌倉殿の13人』も最終章10話を残すのみという段階で、第3代鎌倉殿・源実朝役の柿澤勇人さんの取材会が行なわれました。柿澤さんは、劇団四季の出身で、舞台を中心に活躍されてきた方です。

編集者A(以下A):大河ドラマでは、『平清盛』(2012年)で以仁王(もちひとおう)、『軍師官兵衛』(2016年)で森蘭丸を演じています。大河ドラマ3作目の登場で、日本史の中でも特筆すべき悲運の貴公子・源実朝という繊細な人物を演じることになりました。

I:私の印象に残ったのは、実朝に関する書物を読まれたりしていたとのこと。その中の一冊に、太宰治の『右大臣実朝』を挙げていたことです。

A:『右大臣実朝』は太宰には珍しい長編小説です。実朝の生誕750年にあたる1942年の翌年に刊行された作品。今回私は出張していて参加できなかったのですが、柿澤さんの取材会とほぼ同時期に太宰の生家「斜陽館」を訪れていたので、なんだか感慨深いです。

I:さらに、柿澤さんは、実朝の和歌集『金槐和歌集』をも読んでいたことも明かしてくれました。そんなバックグラウンドがあることを踏まえて読んでください。まずは、「柿澤さんにとっての大河ドラマとは?」 という質問にこう答えてくれました。

〈祖父が毎週大河ドラマを見ていたこともあって、子供の頃からすごく身近にあるドラマでした。時代設定や所作なども含め、クオリティの高い環境で作っていて、役者もすごい方々ばかり。現代劇ではないので、時には難しい言葉を使わないといけない。出演3作目の『鎌倉殿の13人』では、やりたいことをやらせてくれて、受け入れてくれる監督やカメラマンさんがいて、一緒に向き合ってくれました。『平清盛』や『軍師官兵衛』の時は、自分自身に余裕がなかったため気がつかなかった部分です。しかも折に触れて、小栗さん(北条義時役・小栗旬)が無理のない範囲で盛り上げてくれる。それが決して馴れ合いにはなっていないところがすごいところだと思っています。みんなそれぞれが役のために準備してくるものだけれど、そこに至るまでの環境がとても温かいなと思いました〉

若き将軍の悩みと向き合いながら

小栗旬さん演じる義時(右)は実朝の叔父にあたる。(C)NHK

I:さて、実朝ですが、初代将軍で父である頼朝(演・大泉洋)が亡くなったあと、兄の頼家(演・金子大地)が将軍職を継いだわけですが、北条一族と比企一族の権力闘争のあおりで、頼家が殺害され、12歳で第3代鎌倉殿に就任します。

A:北条義時(演・小栗旬)は実朝の叔父で、乳母は実衣(演・宮澤エマ)ですから、バックには北条一族が控えています。柿澤さんは、実朝にとって義時はどういった存在なのかこう答えてくれました。

〈義時と実朝はもちろん年も離れていますが(義時が29歳年長)、立場は実朝が上。でも、将軍とはいっても、政を回すことができないし、無力だということもわかっている。回を追うごとに、義時がやっていることと、自分が思い描いていたことが乖離していきます。それによって、乱がおきたり人が死んでいったりすることは、ドラマはもちろん、史実としても実際にあったことですよね。最初は義時を信用していたけれど、だんだんと対抗していかなければならない存在になってくる。義時の力を抑えるか、それを超える力を持って政をしていかないと、きっとどんどん悪い方向にいくんじゃないかと考えるんですね。そういう意味で、敵意とは違うけれど、かなり危ない存在として義時を意識していくことになります。ただ実朝は力でそれをねじ伏せるとか、復讐するとかいった人間ではなく、先回りをして、鎌倉から日本を豊かにしていこうとするような、賢い人間になっていくんです。憎かったり、悔しかったりといったネガティブな要素はもちろんあるんですが、やはり争いはしたくないし、犠牲はもう嫌だという思いが強かったと思います〉

I:役柄としては、義時を「危ない存在」と認識していく実朝ですが、作品づくりの中では、義時=小栗旬座長は頼りになる存在だったようですね。

A:これまでも取材会を通じて、金子大地さん(源頼家)、中川大志さん(畠山重忠)が座長への熱い思いを語ってくれましたが、柿澤さんはこんなふうに語ってくれました。

〈小栗さんは座長としてやっぱり長い期間主役としてやらなきゃいけないし、義時もかなり難しい役。普通だったら役者は自分のことでいっぱいいっぱいになるはずなんですが、すごく広い視野を持ってスタッフやキャストの方々にも話しかけてくれるんですよね。僕は大河ドラマには3回目の出演になるんですが、今回は大河ドラマの現場とは思えないくらいアットホームで、変な緊張が一切ない現場なんです。それがすごくありがたいです。小栗さんは、毎日しているマスクに、いつもメッセージを書いてくれています。誰かがクランクアップする際には、その方に向けて一言とか。僕が現場に入った時も、マスクに「実朝、ようこそ」と書いてくれていました。それだけで僕も嬉しいですし、みんながハッピーになるようなやり方をされるので、非常に頼もしいです。勉強になるし、刺激にもなる、そんな存在でした。時代劇だから所作などがついてまわるんですが、それに縛られて心が動きにくくなることがあるんです。そんな時に小栗さんが「かっきー、一回全部忘れて自分がやりたいようにやってみなよ」と言ってくれたんですよね。そうやって僕にも、監督も含め周りの方々にも提案してくれるのはありがたいなと思いました〉

A:当欄では、座長小栗旬のリーダーシップは天性のものだとこれまでも指摘してきましたが、それを裏付けるお話でした。

I:さて、第39回では、実朝の悩みが明らかになります。泰時に届けた「恋の和歌」を受け止めてもらえなかったわけですが……。

〈回を追うごとに明るみになるとは思うんですけど、実朝のパーソナルな部分は、大竹しのぶさんが演じられた歩き巫女のおばばには一発で見抜かれていたんですよね。具体的にこうだと見抜かれたわけではないけれど、実朝がなぜ悩んでいるのか、ということを言い当てたのが、おばばでした。そうしたパーソナルな感情というのは、いつの時代にもあることだと思って演じました〉

A:本編でも指摘しましたが、実朝の時代から半世紀程前に生きた藤原頼長は、その日記『台記(たいき)』に「男性との恋」について、あけすけに記述しています。私はむしろ実朝の思いをスルーしてしまった泰時の「鈍感力」が出た場面だと思いました。

都から嫁した千世(左/演・加藤小夏)をどうしても愛せない実朝。(C)NHK

御家人・和田義盛との主従を超えた関係について。次ページに続きます

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