年齢の高い人だけでなく、若い人がアナログレコードやフィルムカメラを購入するのが珍しいことではなくなった。アナログの表現には、デジタルにはない独特の味わいがある。今やアナログはレトロな回帰趣味というよりも、高画質のデジカメやハイレゾのプレーヤーに慣れた人たちが、進化したテクノロジーによって鍛えられた感覚で新たに発見した「豊かなコンテンツ」なのである。その一方で、写真家が保管しているアナログのフィルムなどはどんどん失われていっている。

THE CRAFTEDの参加写真家

『THE CRAFTED』は、7名の写真家のフィルム写真を500部限定で紹介する、手作り感あふれるZINE(自由なルールで制作した冊子)である。「失われつつあるフィルム写真の素晴らしさを、新しいカタチで伝えよう」というフィルム写真好きのアートディレクターと編集者の思いつきから始まった『Dear Film Project』が発行元。『Dear Film Project』の意図に賛同した7名の写真家のキャビネットに眠っているフィルムを発掘し、新しいコンテンツとして編み、手作り感あふれる7冊の小さな写真集に仕上げた。大人のサークル活動の延長のように思われるが、それぞれのZINEは、色が異なる糸かがり仕上げで、印刷も最高のクォリティ。参加写真家も錚々たる顔ぶれだ。

谷川俊太郎 SHUNTARO TANIKAWA『二眼レフの日々』

若き詩人の眼が二眼レフカメラで切り取った、昭和の日常の余白。

谷川俊太郎の作品
谷川俊太郎の作品
谷川俊太郎氏が20代のころに二眼レフカメラで撮影した家族や日常の風景からは、詩人特有の透徹した視線が感じられる。

伊島 薫 Kaoru IZIMA『SIGHT SEEING』

デビュー直前に、アメリカの観光地で発見したサスペンスな光景。

伊島薫の作品
伊島薫の作品
デビュー直前の伊島薫氏が雑誌の懸賞論文に当選したアメリカの旅で撮影した観光客の姿は、ダイレクトプリントならではの独特の色合い。

井出情児 Jyoji IDE『ANGRA』

60年代末、日本で初めて誕生したサブカル=「アングラ」のエネルギー。

井出情児の作品
井出情児の作品
高校生の頃から状況劇場に参加していた井出情児さんが切り取った60年代の新宿のアングラカルチャーは、現代の日本には失われたエネルギーが横溢している。

三浦憲治 Kenji MIURA『MIURA HIROSHIMA』

歴史にこだわりをもたず、赴くままに今の広島を切り撮る広島生まれの眼。

三浦憲治の作品
三浦憲治の作品
広島生まれの写真家・三浦憲治氏が撮影した『HIROSHIMA』は、ほとんどの人が抱いている広島のイメージを破壊する。

渡辺達生 Tatsuo WATANABE『Ta Wa Wa』

女性写真の巨匠が到達した、母性を凝縮した縄文土偶のような豊穣。

渡辺達生の作品
渡辺達生の作品
のべ5000人以上の美女を撮影してきた渡辺達生氏は、プライベートで撮影した究極の女性写真を「お母さんの脇や乳房の下の湿り気のある温もりの記憶」と語る。

長濱 治 Osamu NAGAHAMA『BLUES ROAD』

ブルーズマンを撮るのではなく、身体に沁み込んだBLUESを表現する。

長濱 治の作品
長濱 治の作品
ブルーズ好きの長濱治氏がプライベートでアメリカ南部に4年通ってブルーズマンを撮影した写真のコンタクトシートからは、ブルーズ巡礼の旅の息遣いが感じられる。

片岡義男 Yoshio KATAOKA『東京でたべた』

いつの間にか消えてゆく、見慣れた東京の街の風景。

片岡義男の作品
片岡義男の作品
作家・片岡義男氏の視点が切り取った東京の食べ物のディスプレイからは、POPカルチャーとしてのフィルム写真の魅力に気付かされる。

大人の遊び心とフィルム写真への愛情が生み出したアナログで手作りのZINE の魅力は、8月6日(金)から29日(日)まで、新宿のBEAMS JAPAN5階の「B-GALLERY」で開催される『THE CRAFTED展』で購入できる。会場では、7名の写真家のサイン入りBOXセット(限定50セット)や、BEAMSとのコラボで7人の写真をプリントしたTシャツとトートバッグなども、ZINEとセットで販売(限定各50セット)予定。

THE CRAFTED
2021年8月6日(金)発売
A5判 32ページ 定価各2,200円+税
発行 TOKYO CULTUART by BEAMS

<出版記念イベント>
日時:2021年8月6日(金)〜29日(日)11:00〜20:00
入場無料
会場:新宿BEAMS 5階 「B-GALLERY」
https://www.beams.co.jp/bgallery/
展示の詳細は、BEAMS JAPANのHPをご覧ください。
https://www.beams.co.jp/news/2576/
ZINEの問い合わせは、Dear Film Projectのメールアドレスまで。
info@dfpjt.com

TEXT/Dear Film Project

 

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